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28 高知論叢 第99号 しかし,財・サービスの性質や内容を決めるのは,あくまでそれらを提供する人間の集合的行為関係・行為様式であり,それらが財・サービスの提供の範囲や方法,基準を定めるのであって,その逆ではない。新古典派や公共経済学派は,これをひっくり返して考えようとしたことに混乱の出発点がある。現実には,非排除性と非競合性をその性質や属性として合わせもった財・サービスなどは存在しないのである。なお,この定義にもとづけば,企業も金融も,公共財であることから除外されてしまう。 第2に,理論や理想として公共性を求めるのではなく,現実的・実際的な人間の行為に関係するものとして公共性を明らかにしようとするものである。 人間の集合的行為のもっとも高度に発展した行為関係・様式の理想型や理念型を理論的に想定して,それを公共性と定義しようとする学説は多い。できる限り人間の幸福に寄与するような公共性の高度な発展を望むことについては,わたしも同調するものである。そしてそのような理想型や理念型をどのように追求すればいいのかという探求の意義についても,共有するものである。 しかしこのような研究方法は,公共性を抽象的な理念やスローガンにしてしまうことによって,現実の人間の集合的行為の現実とかけ離れてしまい,また公共性を限定された狭いものにしてしまって,公共性研究の範囲と対象を狭めてしまう恐れがある。わたしは公共性とは,もっと広い多様な行為関係や行為様式であると考えるものである。 公共哲学者のアレント氏は,物と人との関係である労働(labor)や仕事(work)は低次なものであり,同氏の定義する人対人の相互性であるコミュニケーション行為の「活動(action)」が高次であると考え,この複数人間によるコミュニケーションが公共性であるといった。3) しかし,人間の労働や仕事は物対人の関係ではなく,人対人の関係があってこそ機能するものであり,コミュニケーションなくしては成立しえない。わたしは,現実の仕事や労働,生活の共同関係として,公共性をみようとするものである。 第3に,一面的・一義的な内容をもった公共性ではなく,多様で多面的な人間の集合的行為関係・行為様式を表したものとして公共性を求めようとするも