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公共性研究の方法と公共性三元論(上) 29のである。 現実に存在する人間の集合的行為の現実は,空間的にも時間的にも,実にさまざまで多種多様である。空間的にとは,規模や範囲,分野でみても実に多様な集合的行....

公共性研究の方法と公共性三元論(上) 29のである。 現実に存在する人間の集合的行為の現実は,空間的にも時間的にも,実にさまざまで多種多様である。空間的にとは,規模や範囲,分野でみても実に多様な集合的行為様式があることであり,時間的にとは,ニーズに合わなくて衰退したり,管理に失敗して崩壊したり,あるいは必要に迫られて新しく生成してきたりして,集合的行為は流動的であるということである。それはこれらの集合的行為様式を組み立てる人間自身が多面的多様性を有する存在だからである。 第4に,公共性疎外なしの公共性ではなく,公共性疎外ありとして,公共性研究をすすめようとするものである。 疎そ外がいという難しい概念は,ヘーゲル氏やマルクス氏が考えだしたものであるが,人間が自分の作り出したものに支配されることをいう。したがって公共性疎外とは,本来自分の利益のためのものであった共同的行為や行為様式が,自分に敵対し自分を支配するようになって自分に不利益をもたらすことを表す。例えば,自分や自分の国を守るためにといわれて拠出した資金が,他国の侵略に使われたり,それに意義を唱える自分を弾圧する道具になってしまうなどのことである。 政治学・行政学分野や公共哲学分野には,公共性という言葉が,政府権力を最高のものとする国家主義や,特定階層・階級や特定政党が政治権力を独占する全体主義国家を促進する手段に利用され,市民の人権や自由を抑圧・侵害してしまうことに強い警戒心をもつ学説が多い。 公共哲学者のハーバマス氏のいう「市民的公共性」,全体主義に対して徹底した批判を展開したアレント氏の「公共性とは複数性」,公私二分法にもとずきお上の「公」が「私」に対して「滅私奉公」を強いることに抗し,「私」を活性化させ「公」に公開を迫る「活私開公」論に公共性を求める公共哲学京都フォーラム(金泰昌氏と山脇直司氏)などの学説である。これらの公共性学説は,公共性疎外という現実を強く認めようとする立場にある。新古典派や公共経済学派などにはこのような公共性疎外論は無く,ただフリーライダー(ただ乗り)防止論を展開するだけである。4) しかし,上記の諸学説は政治分野に限られているという欠点をもつ。それは