099号

099号 page 32/122

電子ブックを開く

このページは 099号 の電子ブックに掲載されている32ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
30 高知論叢 第99号公共性をもっぱらこの分野に限定したからである。わたしの立場からすると,公共性疎外という現象は,なにも政治分野に限らない。これ以外の分野についても,人間自らが自分たちの共同利益を生み....

30 高知論叢 第99号公共性をもっぱらこの分野に限定したからである。わたしの立場からすると,公共性疎外という現象は,なにも政治分野に限らない。これ以外の分野についても,人間自らが自分たちの共同利益を生み出そうとする行為が,それと敵対した様相をとることは歴史的にも多かったし,それがなぜなのかを現実的・具体的に解明することが重要なのである。 第5に,以上のようなわたしの考えに基づけば,公共性は静態的・固定的・普遍的に存在するものとして定めるのではなく,動態的・創造的・永続調整を必要とする人間の集合的行為関係して,広く柔軟に追究する必要性が生まれる。このような研究を可能にする方法論(考え方)として,わたしはこれまで後に述べるような公共性三元論という理論的枠組みと方法を提起してきたのである。 第6に,政治・行政分野や財政分野に限定される公共性ではなく,金融分野をふくめより広く統一的・簡潔に説明できるものとして公共性を明らかにしようとするものである。 公共性研究は,政治学,財政学,法学,行政学,公共哲学などの分野で盛んに研究が進められ,その研究成果は膨大なものになっている。とりわけ公共哲学分野では,公共哲学京都フォーラム編の学際的な22巻にもわたる長大な研究成果が,2001年から2008年にかけて公表されてきた。しかし驚くべきことに,この膨大な学際的研究においても,金融の公共性をテーマにした研究論文は皆無であり,社会科学や経済学を特集した巻号においても,そうなのである。5) またわたしの知る範囲ではあるが,これまでの公共性研究においても,金融の公共性について正面から挑んだ研究やそれを学際的な公共性研究のなかに位置づけようとした研究成果は,ほとんど無いという状況にある。 ただし,「社会的共通資本」を公共性の基本概念とした宇沢弘文氏の研究成果と,「インフラストラクチャー」という基本概念で取り組んだ池上惇氏の研究成果は,金融もふくめて公共性研究に取り組んだ数少ない先駆的業績である。6) 第7に,国内分野に限定されるものとしての公共性ではなく,国際分野をふくめ統一的・簡潔に説明できる公共性の方法論を求めようとするものである。 拙稿でも紹介したように,国際公共性についての研究成果は,国際政治学分野,国際経済学分野,国際政治経済学(IPE)分野,国際行政法分野,国際法