099号

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38 高知論叢 第99号 AにはA自身の私的制御方法と私的基準や私的規範があり,BにもB独自の私的制御方法と私的基準や私的規範がある。 私的利用様式の場合には,自分の権限や裁量で,自分の能力や好みに適した....

38 高知論叢 第99号 AにはA自身の私的制御方法と私的基準や私的規範があり,BにもB独自の私的制御方法と私的基準や私的規範がある。 私的利用様式の場合には,自分の権限や裁量で,自分の能力や好みに適したように,投出と投入をコントロールすることができる。自分の好きなように手配したりデザインできたりするのである。誰にも干渉されたり文句を言われなくてすみ,大いなる私的自由が保証される。私的財の領域や範囲をより拡大して,より大きな自由を自分に確保したいとの欲求は,自然な人間的欲求である。その自由は,その人間にとっての自己実現の拡大となる。自分の好きなようにデザインし,自分の好みで,自分の好きなようにできるからである。富裕な人や権力者がより広大な屋敷や空間を自分のものにしようとするのもそのような本能からであろうか。 人間の投出と投入の認知能力,学習能力,創造能力が高まれば高まる程,利用対象物をより有益に使うことが可能になるかもしれない。またさまざまな道具などの行為手段を開発することによって,より効率的な投出・投入行為ができるかもしれない。彼が幸いにして,体力や知力に恵まれていれば,これらの条件を思う存分に生かして幸運な生活を送ることも可能になる。 しかしすべての人がそのように体力や知力に恵まれているとは限らない。その反対に,体力が衰えてきたり,障がいをかかえていたり,病気になったりした場合には,不幸にして命を無くすことにもなる。投出と投入のコントロールに失敗して生命や財産を失う自由もあり,すべて自己責任という不安定な状況にある。 私的利用様式の場合には,投出と投入の相互作用と相互依存関係は,上記の引用においてマルクス氏の指摘するように,当人の認知可能な限度と範囲内においてであるが,簡単で明瞭であり,透明性や可視性は高く,ある投出と投入が結びついていることを実感し,理解することは容易である。試行錯誤や経験による認識と知識の蓄積と継承によりこの透明性は発展する。これにより,自分のために自分でコントロールするには,好都合である。 ただしマルクス氏のいうほどにはこれは楽観的なものではない。この簡単・明瞭性もあくまで当人の認知が可能な程度と範囲でのことであり,複雑で込み