099号

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公共性研究の方法と公共性三元論(上) 43 AとBのそれぞれの投出と投入には相互作用と相互依存の関係があるので,Aは自分の利益のためだけでなく,Bの利益のためにも投出と投入行為を行わなければならないとい....

公共性研究の方法と公共性三元論(上) 43 AとBのそれぞれの投出と投入には相互作用と相互依存の関係があるので,Aは自分の利益のためだけでなく,Bの利益のためにも投出と投入行為を行わなければならないという責任(社会的責任)が生じる。そのことはBにとっても同様であり,Aの利益のための投出と投入行為も求められるようになり,そのような責任(社会的責任)が発生する。後ほど述べるように,AとBの共同利用関係が一つではなく複合しているときには,それらすべてについて複合的社会的責任が発生する。 私的利用様式では,A,Bそれぞれに独自の制御方法や私的基準,私的規範などがあり,自分で自分の好きなようにできる私的自由があった。しかし,AとBの投出と投入行為が結合される共同利用様式においては,そういうわけにはいかない。それぞれが,それぞれの自分流をすべてについて通そうとすれば,投出と投入の結合は永遠に不可能である。この結合が首尾良く行われ持続的に共同利益を生み出すことができるためには,共通の制御方法,共通基準,共通規範が必要になる。これらに服する限度と範囲で,AとBのそれぞれの私的自由は失われる。 私的利用様式においては,成功するか失敗するか,そして幸福になるか不幸になるかは本人次第という不安定性のなかにあったが,共同利用様式では,投出と投入行為の結合と共同制御によって,A,Bそれぞれが単独の投出・投入行為では困難であったことも実現可能性をもち,両者に利益をもたらす。 またA,Bそれぞれ単独で投出・投入することができる程には利用対象物が豊かでない場合には,AとBは利用対象物を共同で分け合って利用して,両者に利益をもたらす。物が少なければ使い回しするのが当たり前であった。それぞれの家庭に自由に使える内湯がなかった時代には,地域の共同湯である銭湯は他人に迷惑をかけないようにというモラルを伴ったが,地域の憩いや交流の場であり,地域の公共財であった。 AおよびBという人間は,前述したように多面的多様性をそなえた人間である。したがって,このような人々すべての人のニーズと欲求,利益に適合できる投出と投入行為が求められることになる。そのときに共同利益水準はもっとも高くなる。