099号

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46 高知論叢 第99号共同利益軸の三本の軸である。これらは三つの行為側面のそれぞれについての質的水準を判定する軸となる。矢印の外側に向かって広がっていけばそれらの質的水準はより高度なものとなる。 図表の....

46 高知論叢 第99号共同利益軸の三本の軸である。これらは三つの行為側面のそれぞれについての質的水準を判定する軸となる。矢印の外側に向かって広がっていけばそれらの質的水準はより高度なものとなる。 図表の細い矢印で表したものは,それらの行為側面が相互に関係しあっていることを示している。共同利用が持続的な共同利益を生み出すようにするためにはどのような共同制御行為が必要で,どのように成功し,どのように失敗したか,公共性研究とは,このような人間の集合的行為関係・行為様式の相互作用の動態を,歴史的・具体的・現実的に明らかにすることである。 新古典派と公共経済学派は,ある人の消費を排除できないこと(非排除性)と,ある人の消費が他の人の消費を妨げないこと(非競合性)という二つの条件を満たす財を公共財と定義した。しかしそのような性質を最初からもつ財は現実には存在しない。排除は技術的にも物理的にもいつでも可能である。また非競合性という性質をもつ財・サービスもこの世に存在しえない。ある人の消費が他の人の消費を妨げない(減少させない)財というのは,使っても使っても減らないような財なのである。 その後の論争において提唱者自身がこの両原理が純粋に当てはまるのは,国防ぐらいであると認め,それらを純粋公共財と定義し,それ以外の,これらの原理が一つしか当てはまらないものを準公共財とよぶようになった。最近では,非排除性については,排除費用が高い財と定義するというように変質もしてきた。非排除性と非競合性をもつ公共財の典型として研究者がしばしば引用してきた街灯,灯台,公園などの実例についても,決してそうではないとの反省的論調も現れるようになっている。12) ただし,非排除性という縦軸と,非競合性という横軸の二つの分析軸で,財・サービスの性質を分類する方法は残っている。非排除性はあるが競合性がある(他の人の消費を妨げる)のがコモンプール財で,自然環境に代表される。排除は可能であるが競合性がない(他の人の消費を妨げない)のが会員制のクラブ財である。そして,排除性と競合性がある(他の人の消費を妨げる)のが私的財というようにである。また競合性原理で定義して,混雑しない道路は公共財であるが,混雑する道路は私的財に近くなると説明する。