099号

099号 page 51/122

電子ブックを開く

このページは 099号 の電子ブックに掲載されている51ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
公共性研究の方法と公共性三元論(上) 49 伝達的共同利用とは,Aの投出した情報がBに投入されて伝えられたり,Bの投出情報がAに投入されて伝えられたりすることである。 AとBのそれぞれの投出・投入行為が....

公共性研究の方法と公共性三元論(上) 49 伝達的共同利用とは,Aの投出した情報がBに投入されて伝えられたり,Bの投出情報がAに投入されて伝えられたりすることである。 AとBのそれぞれの投出・投入行為が結合されるのであるから,双方の意思や意図,考えが支障なく,効率的に伝達される必要がある。またこれによってそれぞれがもっている有用な知識や情報,文化がそれぞれに伝えられる。AとBそれぞれ単独では入手できなかった有用物に関する情報や有益情報,文化などを獲得できるのである。 このような共同利用関係を支える利用対象物[U]p として,まず重要なものに,共通の言語と文字があげられる。言語と文字は,人類が開発したもっとも基盤的な公共財である。そしてこれらを教える公教育や学校も基盤的な公共財となることはいうまでもない。さらに言語と文字を記録・保存する媒体,およびそれらを伝える信号やケーブル,通信設備,電波などのさまざまな通信手段も公共財となる。 また知識を保存する図書館,文化や絵画などを保存する美術館,郵便・電話などの通信手段,新聞・公共放送などのマスメディアなどもあり,最近急速に普及し始めたインターネットもそうである。これらとこれらを機能させるハードウェアーやソフトウェアーさらにそれにかかわる人材とサービスは,誰にも利用が開かれた社会の重要な公共財となる。15) これらによって有用・有益な知識や情報,生活方法,生活習慣,文化,音楽,絵画,娯楽,生活規範・モラルなどが広められ,蓄積され,伝承されていくのである。これらの情報伝達手段は,以下に述べるすべての共同利用に欠かせないものであるとともに,投出と投入行為をコントロールするための共同制御手段として,民主主義と情報公開の基盤になる。 「市民的公共性」を提起した公共哲学者のハーバマス氏が,公共性を「コミュニケーションの場としての公共空間」に求め,言論・表現の自由と情報公開,公論の重要性を強調したのにも根拠がある。 なお蛇足ながら,言語と文字の素材的性質は単なる無意味な記号であり,音声通信も単なる人工音である。それに共通の意味を与え,それを共同で学ぶことによって,それらはコミュニケーションを担う重要不可欠な公共財となる。