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52 高知論叢 第99号ていった。 さらに金を節約・管理するために金と交換できる銀行券(兌換銀行券)が発行されたが,戦争と恐慌のため金との交換は停止され,現代では中央銀行が発行・管理する紙を材料とした不換....

52 高知論叢 第99号ていった。 さらに金を節約・管理するために金と交換できる銀行券(兌換銀行券)が発行されたが,戦争と恐慌のため金との交換は停止され,現代では中央銀行が発行・管理する紙を材料とした不換銀行券が貨幣の主流になっている。 マルクス氏は,次のように貨幣の発生過程について述べている。「他のすべての商品の社会的行動が,ある一定の商品を除外して,この除外された商品で他の全商品が自分たちの価値を全面的に表すのである。このことによって,この商品の現物形態は,社会的に認められた等価形態になる。共通の等価物であることは,社会的過程によって,この除外された商品の独自の社会的機能になる。こうして,この商品は―貨幣になるのである。」17) 貨幣とは社会にとっての「共通の等価物」である。共通の等価物というのは,その社会のすべての人がそれでもって自分の必要とする物は何でも入手できる万能性を,貨幣と認めた材料に与えたということである。この万能性ゆえ,商品やサービスだけでなく,給与,租税,国家予算,企業の財務や簿記などの,経済活動にかかわるすべての数量を,この共通貨幣単位で表示することができる(価値尺度機能)。貨幣単位とは,例えば円,米ドル,ユーロ,ポンドなどであって,それぞれの国によって異なる。この機能によって経済活動の評価や比較,予測が一元的に容易にできるのである。そしてこの貨幣を使って必要な有用物と交換したり(交換手段機能),給与や返済などの支払いに使ったり(支払い手段機能),準備金として貯めておくことができる(貯蓄機能)。この貨幣の公共財としての働きなくしては,つまり貨幣的共同利用関係なくしては,生産も消費も生活もすべてが成り立たなくなる。 貸借的共同利用とは,Aの投出した貯蓄をBが借り受けて投入し後に利子をつけて返済したり,その反対にBの投出した貯蓄をAが借り受けて投入し後に利子を添えて返済する方法である。AとBの間には,債権者と債務者という信用関係が形成される。 日本の中世には,出すい挙こ米まいという借金制度があった。これは農民が春に種モミを領主から借り入れ,秋の収穫時には借り入れ元本に利子分をつけて返済するという仕組みである。一粒の種モミは100倍のモミをつけるので可能であった