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公共性研究の方法と公共性三元論(上) 53のである。しかも,①この利子の総量は元本の2倍を超えてはならないこと,②借り手の意思に反して質に入れた土地が流れることはないこと,という法律(律令)によって借り....

公共性研究の方法と公共性三元論(上) 53のである。しかも,①この利子の総量は元本の2倍を超えてはならないこと,②借り手の意思に反して質に入れた土地が流れることはないこと,という法律(律令)によって借り手が保護されていた。貸し手も,借り手が破たんしてしまっては元も子もないからであり,貸し手と借り手が共生できることを保証する仕組みがあったのである。 他にも「無尽」,「頼母子講」などの小口の資金を出し合って困ったときに助け合う金融制度もあった。これは全員参加であって村落共同体の絆を維持するためのものであり,現代に至ってもこの風習が受け継がれている村があることが報道で紹介された。これらの制度が信用組合や信用金庫などの協同組合金融へと受け継がれて,銀行制度の発展の礎になったのである。18) 前述したように,以上に述べた共同利用関係は,お互いに他の共同利用関係の働きを補完しあって複合的に機能する。 例えば,農業による土地の利用が田園という風景・景観を提供したり大雨時の遊水池としての機能を果たしたり,合同的共同利用によって自然資源の効率的利用が可能になったり,交換的共同利用にとっては相互の意思を伝え合う伝達的共同利用や共通の計量単位を用いる単位的共同利用および人間の移動や物流などの運輸サービスを担う道路が不可欠であるが,その道路は飛脚や郵便自動車などのような伝達通信機能を果たす。また貨幣的共同利用は単位的共同利用を必要とするが,合同的共同利用,交換的共同利用,貸借的共同利用を飛躍的に発展させる,などのようにである。 このような共同利用関係の相互補完的働きを複合的共同利用効果とよぶことにしよう。このような現象を経済学では「正の外部効果」などという難しい概念を使って表すが,単に共同利用関係が複合しているだけのことである。 以上,主要な共同利用関係をあげてみたが,実際に存在・生成する人間の共同利用関係はこれらに限定されるものではない。もっと多種多様で多数の共同利用関係が存在するし,それらは相互に網の目で結ばれている。科学技術の発展や政治・経済・軍事における時代の変化とともに,新しい共同利用関係が生成したり,広がったり,劣化したり,消滅したりもする。