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公共性研究の方法と公共性三元論(上) 59らこそ,イングランド銀行のような機関が商業や産業の上に巨大な力を揮うのである。といっても,商業や産業の現実の運動はまったくこのような機関の領域の外にあるのであっ....

公共性研究の方法と公共性三元論(上) 59らこそ,イングランド銀行のような機関が商業や産業の上に巨大な力を揮うのである。といっても,商業や産業の現実の運動はまったくこのような機関の領域の外にあるのであって,この運動にたいしてこのような機関はまったく受動的な関係にあるのであるが。たしかに,それとともに社会的な規模での,生産手段についてのみんなのための簿記やみんなのための配分の形式は与えられている。しかしただ形式だけである。」20) 簿記とは,資金の流れを会計帳簿で認識・理解できるようにする方法である。したがって,「みんなのための簿記」とは,資金の使い方や資金の流れが誰にもみえるようにすることである。「みんなのための資金配分」とは,このような資金の使い方や資金の流れをみんなが認識・理解できることによって,社会的利益がより高まるような資金配分が可能になることを示している。形式に内容を盛り込むのは,人間の創造的行為である。注)1 ) 筆者が「公共性」について学際的な学説研究をまとめた成果は,次の拙稿である。紀国正典[1999]「公共性と公共性諸学説―国際金融システムの規範的方法の検討(1)―」。「国際公共性」について学際的な学説研究をまとめた成果は,次の三つの分割論文である。紀国正典[2002]「国際公共性と国際公共性諸学説(上)―国際金融システムの規範的方法の検討(2)―」,[2002]「国際公共性と国際公共性諸学説(中)―国際金融システムの規範的方法の検討(2)―」,[2002]「国際公共性と国際公共性諸学説(下)― 国際金融システムの規範的方法の検討(2)―」。2 ) サミュエルソン氏がその定義を最初に提唱したのは,Samuelson P.M., “ThePure Theory of Public Expenditure” である。マスグレイブ氏が提唱したのは,Musgrave R. A., The Theory of Public Finance(木下和夫監修・大阪大学財政研究会訳[1961]『財政理論』)においてである。これについては,深谷昌弘[1972]『公共財と社会システム』,柴田弘文・柴田愛子[1988]『公共経済学』を参考にした。マスグレイブ氏は,氏のいう「第一の社会的欲求(本来の社会的欲求)」について,「社会的欲求とは,すべてのひとびとが等しい量の消費の対象とすべきサービスによって充足されるところの欲求である。このサービスの費用を支払わないからといって,その利益の享受から除去されることはありえない」と述べている(木下和夫監修・大阪大学財政研究会訳[1961]『財政理論』p. 10)。しかし私見によれば,これは,ある人の消費が他の人の消費を妨げないこと(非競合性)を示した訳ではない。後生の人が曲解したのではなかろうか。3 ) ハンナ・アレント氏の公共性論については,川崎修[1998]『アレント:公共性