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公共性研究の方法と公共性三元論(上) 61pp. 300~320。「費用に制限がないのなら灯台の光,国防等といえども便益受領を拒むのも物理的に不可能ではない」との主張は,柴田弘文・柴田愛子[1988]『公共経済学』pp.....

公共性研究の方法と公共性三元論(上) 61pp. 300~320。「費用に制限がないのなら灯台の光,国防等といえども便益受領を拒むのも物理的に不可能ではない」との主張は,柴田弘文・柴田愛子[1988]『公共経済学』pp. 139~144。13) 共有資源(common propety)の管理には自主的組織(self-organized)や自己管理(self-governed)によるものなどがあり,多様であることを具体的・現実的に明らかにしたことで,オストローム氏にノーベル経済学賞が授与されたが,同様の視点から具体的・現実的に共同利用と管理様式を検討したものに,次のグループによる研究成果がある。飯國芳明[2010]「特集『コモンズの形成と環境問題』にあたって」,松本允郎[2010]「自然資源をめぐる秩序形成に関する序論的考察―いわゆるコモンズ論を契機として』,飯國芳明[2010]「コモンズ形成の原理と現代的課題」,新保輝幸[2010]「海のコモンズの現代的可能性」,緒方賢一[2010]「漁業権による沿岸海域の管理可能性―高知県の現状から―」。なお飯國教授からは有益なアドバイスといくつかの文献の拝借を受けた。記して謝意を表するものである。14) オストローム氏は,自然資源(氏は「common-pool resources : CPRs」と表現する)を,ストック概念である「リソース・システム(resource・system)」とフロー概念である「リソース・ユニット(resource・units)」の二つに分類して区別することの重要性を強調する。リソース・システムは非排除性をもち公共財に近いが,リソース・ユニットは競合性をもち私的財に近いという。リソース・システムの例としては,「漁場,地下水脈,牧草地,コンピューターシステム,灌漑用水路,河川,湖」をあげ,リソース・ユニットの例には,「漁場から獲得される漁獲高X トン,地下水脈からくみだされる水X トン」を示している。このように二つに分類することで新古典派などの公共財論の難点を解決しようとしたという。Ostrom E., Governingthe Commons : The Evolution of Institutions for Collective Action, pp. 30~33。リソース・ユニット概念は,わたしのいう投出・投入行為概念に近いが,物質的な側面に重点があるのに対して,わたしの場合は,人間による双方向の創造的行為概念である点で異なる。15) 名和小太郎氏は,過度な著作権保護を抑えて情報の公有領域を適度に拡大する「ほどよいコモンズ」を提唱している。名和小太郎[2006]『情報の私有・共有・公有:ユーザーからみた著作権』。16)国際経済学者のキンドルバーガー氏は,氏の国際公共財研究において,平和,自由貿易制度,海洋航海の自由,財産権,標準化された重量や計量単位,固定為替相場制度などを国際公共財としてあげている。Kindleberger C. P., The InternationalEconomic Order : Essays on Financial Crisis and International Public Goods, pp.133~139.17) カール・マルクス[1968]『資本論』第1巻第2章,p. 116,原文p. 101。なお左記の訳文では,「Allgemeines Aquivalent」を「一般的等価物」と訳していたが,これは不適切と思われる。「allgemein」の第1の意味は「全般の,世間一般の,みんなの,共通の」であって,第2の意味に「一般的な,だいたいの,おおまかな」