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70 高知論叢 第99号こと,業界ごとに収益認識基準が乱立しており包括的な基準が存在しないこと,財務諸表の再修正増加の原因が収益認識に関する問題であるというアメリカ証券取引委員会(SEC)の見解などがあったた....

70 高知論叢 第99号こと,業界ごとに収益認識基準が乱立しており包括的な基準が存在しないこと,財務諸表の再修正増加の原因が収益認識に関する問題であるというアメリカ証券取引委員会(SEC)の見解などがあったためである1。 2002年9 月のIASB とFASB 合同会議において収益認識プロジェクトは,FASB 主導によるIASB とFASB の共同プロジェクトとなった。「米国の概念基準書第5 号(稼得利益に特有の認識規準として実現又は実現可能性及び収益稼得過程の終了という条件が求められている)と第6 号(収益を資産及び負債の変動によって説明している)の間に矛盾があり,この矛盾を第5 号が求めている「実現又は実現可能性及び収益稼得過程の終了という条件」を含まない形で解決していく方向性が示されていた2」というように,新しい収益認識基準は,収益費用アプローチではなく資産負債アプローチによって検討が行われることとなった。 2004年2 月のIASB 会議では,FASB より基本的な測定原則として「報告企業は,資産の増加又は負債の減少から生じる収益を,その増加又は減少の公正価値で測定する3」ことが示され,これにより公正価値測定が検討されることとなった。2004年5 月のIASB 会議では法的解放金額(legal layoff amount)と顧客対価額(customer consideration amount)という2 つが検討され,法的解放金額(公正価値測定)を用いる合意が暫定的になされた4。 しかし,法的解放金額を用いることにより生じる契約発生時収益(sellingrevenue)5が問題となり,2005年6 月のIASB 会議では, 契約発生時収益を認識しない履行価値(performance value)という新しい考え方が導入された6。2005年9 月のIASB 会議において,履行価値は顧客ベース価値(customer-basedvalue)という用語に置き換えられた7。顧客ベース価値は,「「顧客にとっての効用」を持つ成果物(製品,サービス又は利用権等)を単独で顧客に売却する場合の価格をいう8」というもので, 顧客対価額による方法であった。2006年10月のIASB とFASB の合同会議では,顧客対価額による方法においても収益認識時点の決定について意見がわかれたため,法的解放金額と顧客対価額の両モデルについて平行して検討することとなった9。 このように,IASB とFASB は資産負債アプローチと公正価値を柱として収