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96 高知論叢 第99号2 外部組織活用の動機と産業による違いでは,なぜ自社ブランドで開発・生産・販売を行う企業が外部組織を利用するのであろうか。また同時に,自社で開発・生産を行う能力があるにも関わらず,他....

96 高知論叢 第99号2 外部組織活用の動機と産業による違いでは,なぜ自社ブランドで開発・生産・販売を行う企業が外部組織を利用するのであろうか。また同時に,自社で開発・生産を行う能力があるにも関わらず,他社ブランドでの供給を行うのであろうか。表1 はOEM 利用・供給のメリット・デメリットについて供給側と調達側に分類してまとめたものである6。簡潔にまとめると,供給側のメリットは販売網や広告といった点でコスト・リスク削減が達成できる反面,自社独自のマーケティングのノウハウやチャネルの構築などができにくくなり,自社ブランド展開の障壁となりうるというデメリットがある。他方で,調達側にとってOEM の活用は,研究開発投資や設備投資の抑制,生産変動の調整弁としての役割をもち,供給側と同じくコスト・リスクの削減が強調される。デメリットとしては,当該分野における自社の独自技術の育成が困難になることや技術・仕様が供給側に流出する恐れが挙げられている。このように,供給側・調達側双方にメリット・デメリットを踏まえた上で,具体的な産業や企業を事例としたOEM や委託生産に関する先行研究ではどのような点が強調されているのであろうか。先述した石井[2000]は,自動車産業における提携プロジェクトを協働型(共同開発・共同生産・生産委託)とOEM 型にわけ,それぞれの特徴を明らかにした。本論との関わりからいえば,生産委託,OEM において,それぞれ共通した事項としてコスト削減を動機としたプロジェクトが多く,相違点としては生産委託にはパートナーからの開発・生産分野における学習を狙ったものがあるのに対し,OEM では皆無であることが指摘されている。しかし,中原[2003][2007]では,PC 産業においてOEM・ODM を通して台湾企業が世界市場に受け入れられる商品を生み出す能力を得たことを指摘し,小池[1997]でもOEM 受注を受託側の学習の機会ととらえ,台湾の自転車2 社を事例として,OEM を学習機会として活用した受注企業の成長プロセスを提示している。また,他の先行6 近藤[2004]では委託生産とOEMの相違点には着目されておらず,外部組織に生産を任せるという観点からOEMという表現がなされているため,ここでは先述した秋野[2008]のいう広義のOEM という解釈で, 委託生産・OEM の双方に一般的に当てはまる事項として表1 をみていく。