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106 高知論叢 第100号出ている。したがって,I社の親会社は,ベルギーの生産を中欧に移管することは,将来的な可能性の問題としては議論をしているが,現時点では考えていない。I社は,親会社が西欧生産拠点を維....

106 高知論叢 第100号出ている。したがって,I社の親会社は,ベルギーの生産を中欧に移管することは,将来的な可能性の問題としては議論をしているが,現時点では考えていない。I社は,親会社が西欧生産拠点を維持していることについて,親会社が地域密着型の企業として地域に根を張ることを重視しており,立地地域の経済環境のメリットを求めて生産拠点を移動させることよりも,立地地域にデメリットがあったとしてもそれをカイゼンにより克服していく努力が自社の強みになると認識していることを指摘している。⑤ 西欧から中欧へ生産移管をせず,西欧生産拠点と中欧生産拠点との間で工程分業【J社】在チェコ空調機器部品製造企業J社の親会社は,I社と同じである。J社は,2000年代半ば,主要にはI社に部品を供給するための拠点として設立された。J社が生産している部品の75%はI社向け,25%がベルギー拠点向けである。なお,ベルギー拠点の生産は,8割が業務用,2割が家庭用であり,後者の家庭用のための部品の全てをJ社が供給している。このようにJ社とベルギー拠点とはある程度の生産工程分業の関係がある。しかし,ベルギーの主要製品は業務用であり,J社とI社の主要製品は家庭用であるので,ベルギー拠点とチェコ拠点との間には,それほど密接な関係はない。ただし,チェコ拠点の設立は,ベルギー拠点の日本人がチェコに出向いて工場を立ち上げたのであり,ベルギー拠点がチェコ拠点を作ったと言ってよい。その意味では,J社設立時に,生産そのものの移転が行われたと言うことができる。⑥ 西欧から中欧へ生産移管をせず,西欧生産拠点と中欧生産拠点との間で顧客分業【K社】在ハンガリー自動車電気部品製造企業K社は,2000年代初頭,顧客の日系企業の欧州拠点への日本からの輸出を現地生産に切り替えるために,また欧州で新規に顧客を獲得することをめざして,ハンガリーに設立された。