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象徴天皇と神話11を指す言葉とし,これに対して国家統一を成し遂げた天皇の統治はシラスであると述べた。そして崇神天皇の代になって大国主神一族の私的支配をウシハクと称するという説明を行った。前述のように万世....

象徴天皇と神話11を指す言葉とし,これに対して国家統一を成し遂げた天皇の統治はシラスであると述べた。そして崇神天皇の代になって大国主神一族の私的支配をウシハクと称するという説明を行った。前述のように万世一系の天皇による日本の統治はシラスであり,ウシハクではない,と説明した。本居宣長『古事記伝』において故所知(シラシシ)とウシハクが比較して論じられた『古事記』崇神天皇の巻を検討しよう。『古事記』によると,崇神天皇の御世は当初必ずしも順風満帆なのものではなかった。疫病が多発し多くの人民が死んだ。天皇は悲しみ,祭事を行って神に聞いた。すると夢の中に大物主大神の心の仕業とわかった。天皇は四方に使者を派遣して大物主の縁者を見つけた。天皇は天下人民太平の詔を述べた。これ以降役気は静まり国家太平になった25,とある。『古事記』には崇神天皇が物部氏の祖先であるとされる大物主大神への神事を行うことで神の心を静めつつ,四方に将軍を派遣して支配下に置き,国を治めることに成功し,その後国家は太平で栄えたと書かれている。此の御世に至りて「初めて現しく食をす國くにとなれる意にて,其の食をす國くにを指て初はつくに國とは云るなり,初て食をすくに國となれる國と云むが如し26」また,大八嶋國所知が継承された文武天皇以後の詔には必ず「食國天下」(ヲスクニアメノシタ)をつくり「公民恵賜撫賜」(オオミタカラメグビタマヒナデタマヒ)と天皇の御世を賞賛する定型句が継承された。本居宣長は「所知食」をシラシメシと読ませている。日本は天地のはじまりより所知食となり,食國ヲスクニと定まりたる故であると述べている。日本で最初に食國を実現したと本居宣長がいう,崇神天皇の代における食國について次のように解説した。「国とは所知看(シラシメス)限の地を云名にて,食国(ヲスクニ)とも云り」「この御世に至りて初めて現しく食国となれる意にて,其の食国を指て初国(ハツクニ)とは云るなり27」食をヲスと発音し,治ヲサに転じたという事を安藤正次は主張している28。食も治も身体の中に入れる,自分に25 同上書1191頁26 同上書1237頁27 同上書1242頁28 安藤正次「国語史上より見たる「シラス」と「ウシハク」『明治聖徳記念学会紀要』第13巻大正9年70頁,白鳥庫吉 言語上より見たる「シラス」と「ウシハク」『明治聖徳記念