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象徴天皇と神話13クニ,ヲスクニなどの崇神天皇の呼称はすべて後世において与えられた。従って呼称に付属する「シラス」「シラシシ」などの崇神天皇の治世を示す賞称も『記紀』の時代における後世の言葉である。天皇....

象徴天皇と神話13クニ,ヲスクニなどの崇神天皇の呼称はすべて後世において与えられた。従って呼称に付属する「シラス」「シラシシ」などの崇神天皇の治世を示す賞称も『記紀』の時代における後世の言葉である。天皇崩御後には称賛する呼称として国風と漢風が付けられる。これは国風称号である。『古事記』はすべて崩御後の記録であるから美称である。幕末における橘守部著『稜威道別』は本居宣長の『古事記』偏重に異義を唱え,『日本書紀』研究で独自の国体論を展開した。橘守部自体の検討は別稿に譲るが,同書においてもウシハクは説明されている。『日本書紀』には大国主神は大物主神の別名でありまたの名を顕国玉男と書かれている。これはうつしくにのたまのかみと読み,葦原醜男(あしはらすくお)とも言う。うつしくにがウシハクとなったと解した。葦原とは天上,黄泉から称えた意味であり,醜男とは剛強勇猛な神という意味である。大物主について「皇孫の尊の御守護神と成座て朝夕の大御食を主うすはきて献り給ふよしの御名也32」と述べている。ここでは,大物主は食を司って差配する守護神であり,ウシハクの語を主宰するという意味に理解している。以上のように橘守部は本居宣長とは違った意味にウシハクを捉えている。(3)現御神と詔『古事記』の言葉の中でシラスと同様に,後世大きな意味を持った言葉は現御神であった。明御神とも書く。憲法第3条の神聖不可侵条項について,日本人は臣民に神聖不可侵な権利があると同様に,天皇にも神聖不可侵な権利があるとは理解せず,天皇の神格化に直接的に結びつけた。神聖不可侵なる言葉が人ではなく,神を指すと考える背景は明御神なる日本語があったことに依っている。明治の日本人の意識は,プロイセン憲法のような,君主も国民も固有のunverletztlich, unantastbar, inviolable の権利があるという存在では決してなく,天皇のみがsacred and inviolable であり,Heilig, Gottlich の存在であると理解した。現御神について,本居宣長はそれまで読めなかったこの言葉を,アキツミカ32 『稜威道別』『橘守部全集第一巻』昭和42年東京美術227頁