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148 高知論叢 第100号山間地特有の地形の険しさが加わるために,きめ細かな移動支援の難しさが生じている。住み慣れた地域や自宅に住み続けたいというのは多くの住民の願いであり,もとよりそのような自己決定は尊....

148 高知論叢 第100号山間地特有の地形の険しさが加わるために,きめ細かな移動支援の難しさが生じている。住み慣れた地域や自宅に住み続けたいというのは多くの住民の願いであり,もとよりそのような自己決定は尊重されなければならないが,町内移住をいとわない人を中心に,町の中心部や各地域の拠点的な場所などに集合住宅を設置することにより,移動問題を緩和することができるであろう。現に,町が2009年6月におこなった調査によれば,調査対象100名程度のうち,2割程度の人が高齢者用住宅の必要性があると答えている。そのような希望者を中心に,集合住宅への町内移住の条件を整え,サービス効率を高める方向も検討されてよいだろう。第五に,町外に転出した家族との関係の再構築という方向もありうる。町内に残された高齢者への移動支援をはじめとするサービスや生活関連施策,地域福祉的な支援がおこなわれていながら,町外家族のUターンの可能性はほとんどない状態になっている。高齢者が町内で生活支援を受けることが家族の負担軽減につながっていることを考えれば,町外家族が相応の負担をすることにも合理性があり,「ふるさと納税」や「ふるさと応援基金」などの形で町外家族が負担した財源に基づいて,移動支援だけでなく種々の生活支援を充実させることが考えられる。高齢者の生活収入は,農業収入(自家用消費を含む)と年金収入を組み合わせることが一般的であるが,第3セクター方式で設立された「大豊ゆとりファーム」は,高齢化により農地管理が難しくなった農家の負担軽減に貢献している。地域の活性化や町内・町外に向けた様々な取り組みも積極的におこなわれている。「穴内あけぼの会」や「せせらぎ会」による種々の田舎体験イベント等や,廃校を活用した宿泊施設「みどりの時計台」などが見られる。そのように,町内住民の生活の質の向上と町外住民との交流に向けた様々な工夫が今後とも,公・民の協働によって展開されることが期待される。大豊町では,行政主導の集落再編も自主的な集落再編も難しいことから,複数集落の取組を支援する「みんなで支える郷づくり事業」が独自に進められている。集落再編ではなく,集落が自発的に共同作業をおこなう場合に,それを支援するユニークな取り組みとして,行政支援の一つのあり方を示すものと言えよう。町外在住者が会員になることによって,大豊特産物が届けられる「大