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154 高知論叢 第100号 この地球循環システムには国境は存在しないし,国境とは関係なくそれを無視してその作用は働く。国境は,人間が自分の勝手な都合で線引きしただけのものであって,地球循環システムからみれ....

154 高知論叢 第100号 この地球循環システムには国境は存在しないし,国境とは関係なくそれを無視してその作用は働く。国境は,人間が自分の勝手な都合で線引きしただけのものであって,地球循環システムからみれば,無用の長物なのである。 後に詳しくふれるが,国際公共性とか国際公共財とは,国境をこえて人間の投出と投入行為が結合される集合的行為様式である。地球循環システムは,国境をこえて存在しており,その恵みや作用は国境をこえて地球的範囲に及んでいるので,これらは国際公共財であり,人間の生存を根本から支える根源的国際公共財である。人種,民族,年齢,性別にかかわらずすべての人類の生命と生存,生活と活動を根底から支える地球公共財(グローバル・コモンズ:global commons)なのである。 しかし現在では,地球上に存在する陸地,地上空間,地下空間,山林野,河川,湖沼,海などの地球環境やそれらが与える地球資源はすべて,国民国家(主権国家)によってその領域(territory)として,排他的に分割・支配されてしまっている。いずれかの国の領域としてまだ分割されていない例外的存在は,南極,公海,深海底,宇宙空間,月などの天体だけになってしまったが,純粋な公海もますます小さな範囲に縮小されつつある。 領域とは,国家が排他的に統治できる権利をもち,その主権を行使できる空間的範囲であり,領土,領水,領空から構成されている。 領土とは,国家の主権が完全・排他的に及ぶ土地の範囲である。領水とは,領海,内水,群島水域の総称で,沿岸国の主権の及ぶ海域のことである。この内,領海とは国家の沿岸に沿って一定の幅をもつ帯状の海域であって,領海の上空ならびに海底およびその下も含めて,沿岸国の主権に服する国家領域である。どの国も海岸線(基線)から12カイリ(約22㎞)の幅を超えない範囲で領海の幅を定める権利をもつが,すべての国の船舶に無害通航権をみとめなければならない(1982年:国連海洋法条約)。領空とは,国家の領土,領水の上空空間のことであって,国家の完全・排他的な主権の及ぶ範囲である。その垂直的な範囲については未定だが人工衛星の最低軌道を限界とする一般的了解があるという。21) 純粋な公海が縮小されてきたというのは,排他的経済水域(exclusive economic