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156 高知論叢 第100号 この図表は左側のA国の国民領域と右側のB国の国民領域が,その間に引かれた国境によって遮断されていることを表したものである。 この国境による遮断によって,A国の国民領域に存在する....

156 高知論叢 第100号 この図表は左側のA国の国民領域と右側のB国の国民領域が,その間に引かれた国境によって遮断されていることを表したものである。 この国境による遮断によって,A国の国民領域に存在するすべての地球資源などの利用対象物はA国に属し,B国による利用を排除することが可能になり,B国の国民は利用できなくなる。同様にして,B国の国民領域に存在するすべての地球資源などの利用対象物はB国に属し,A国による利用を排除することが可能になり,A国の国民は利用できなくなる。 つまり,A国に存在する地球資源などの利用対象物は,A国の国民だけが独占的・排他的に利用できその恩恵を受けることができるものなので,国際的範囲でみればそれらはA国の私的財としての性格をもつ。同様のことはB国に所在する利用対象物についてもいえ,それらはB国の私的財となる。 このような性格をもった利用対象物を,国民国家私的財あるいは国際私的財とよんでおくことにしよう。A国の国民にとっての国民公共財であるが,同時に国際的にはA国の私的財であることに変わりはない。この両者の性格を合わせもつことは,わたしの公共性方法論からすればしごく当然のことである。 A国の国民はその国民領域で保有するさまざまな資源などの利用対象物を使って,A国独自の国民的共同利用様式を発展させる。A国の国民言語,国民度量衡,国民市場,国民財政,国民貨幣,国民金融市場,国民政治制度などである。このような国民公共財を[U]ap と表すことにする。以上のことは同様にB国にも当てはまり,B国独自の国民公共財が発展してくるので,これを[U]bp で示すことにする。国民公共性は,近代国民国家の生成,確立,発展とともに,さまざまに変動しながらも,歴史的にみてみれば,組織的・形式的にいろんな実績や存在様式を示して,最も確固としたものとして発展・変動してきた公共物といえる。 国際システムは,このような多数の多様な国民システムによって構成された複合システムとなる。人種,民族,言語,宗教,文化,生活様式,政治体制,社会体制などで大きな差異があるからである。わたしの計算によれば世界の国で使用されている主要言語の数は,約116種類にもなる。世界の宗教人口は,キリスト教(カトリック,プロテスタント他)22.6億人(33.2%),イスラム教(スンニ派,シーア派他)15.2億人(22.3%),ヒンズー教 9.4億人(13.7%),仏