100号

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公共性研究の方法と公共性三元論(下) 159的伝統」である。国際社会とは,諸国家からなる社会であり,諸国家が共存と協力,相互依存のうちにある平和的な社会である。国際社会は戦争状態にある社会でも,中央政府を....

公共性研究の方法と公共性三元論(下) 159的伝統」である。国際社会とは,諸国家からなる社会であり,諸国家が共存と協力,相互依存のうちにある平和的な社会である。国際社会は戦争状態にある社会でも,中央政府を有する社会でもない。それは,個別国家の「国益」を認めるが,法と道徳に対する敬意も有する。そこで求められる「利益」は,一者の利益でも全体に同一の利益でもない。それは,諸国家の「共通利益(commoninterest)」にほかならない。 国際システムについてのこれらの三つの思考は,実は単なる考え方ではなく,現実に国際システムを動かしている三つの動輪であると,わたしは考える。ホッブズ的動輪,グロチウス的動輪,カント的動輪の三つである。このそれぞれ異なった三つの方向に動く動輪の上に設置された台車が,国際システムである。したがって国際システムは,がっちりと固定したものではなく,いずれかの動輪が強く動くたびにその方向に引きずられるという流動的,動態的,不安定な存在である。わたし自身は,カント的方向にこの台車が動くことを切望しているが,現実はそう簡単なものではない。しかしカント的動輪が確実にその力を増していることも間違いのない事実である。国際共同利用様式(単純対等ケース) 国民国家(主権国家)が支配する多数で多様な国民領域に分断されていた国民共同利用様式においても,人間の投出と投入という生存や生命活動,生活や経済活動にかかわる行為を,国民領域内に完全に閉じ込めることは不可能である。 第1に,前述したように,大気や水の循環を国境で阻止できないからである。ある国民領域内で汚染された大気や水は,かならず越境して他の国民領域において有害な作用を及ぼすのである(いわゆる越境汚染問題)。 第2に,国境は人為的に人間が自分の都合で線引きしたものであって,河川や湖沼,海洋,山岳,平野などの自然界利用対象物は,そもそもが元から国境を越えて存在しているものが多いからである。 第3に,海洋資源に特徴的であるが,それらは領海とは関係なく地球的規模の生物連鎖でつながっており,とりわけ回遊性魚類は領域に閉じこめることは不可能であるからである。