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162 高知論叢 第100号 国際共同利用とは,利用対象物[U]ip に対して国境をこえて多数の国の国民が投出と投入行為をしていることである。 国際共同利益とは,このような投出と投入行為の結合によって生じる持続....

162 高知論叢 第100号 国際共同利用とは,利用対象物[U]ip に対して国境をこえて多数の国の国民が投出と投入行為をしていることである。 国際共同利益とは,このような投出と投入行為の結合によって生じる持続的集合利益が国境をこえた範囲に平等に還元されることである。 国際共同制御とは,このような持続的利益を生み出すために,利用対象物[U]ip について,国民国家の協同作業によって国境をこえて国際調整したり権限を行使できる組織や機関を創設したり,あるいは国境をこえた市民や団体の連携活動や協同作業によって,共同利用が共同利益を持続的に創出できるようにコントロールすることである。 国際公共性は当然に国民公共性をふくむ概念である。なぜなら,国際公共性が成立するためには,国境をこえること,つまり国民公共性の単位や枠組みをこえることが必要であり,国際公共性は国民国家が国境をこえた共同利用諸関係や共同利益諸関係,共同制御諸関係を創造・構築して,初めて発展していくのである。したがって国際公共性が地域的・地理的に発展していくことは,そのなかにより多くの国民公共性を包み込むことになる。国民公共性の発展度や質的程度,様式,内容,規模はそれぞれの国の歴史や国民的・民族的特性を反映して多様であるので,国際公共性が地域的・地理的に発展すればするほど,国際公共性は多様な国民公共性によって構成された複合体としての複雑な性格を強める。 他方で,国際公共性は国民公共性を否定した概念である。なぜなら,国民公共性が国際公共性として発展していくためには,国民公共性が発展的に解消されるか一元化・標準化・統合化されることが必要だからである。国境をこえた共同利用諸関係や共同利益諸関係,共同制御諸関係の発展・構築は,国民公共性そのものの変革・変容を求めるのである。 したがって国際公共性と国民公共性は対立・矛盾する関係にある。国際公共性と国民公共性との対立・矛盾は,国民国家の生成発展と国際的諸関係の高度化とともに人類社会が長く直面してきた課題であり,今後もそういうものとしてあり続けることが予想される。これは,国際金融の世界では「国際均衡と国内均衡の矛盾」として,現代に至るまで人類社会を長く悩ませてきた問題であ