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公共性研究の方法と公共性三元論(下) 163り,今後もそうであって,国境をこえた金融のグローバル化が進めば進むほど対立・矛盾が激しくなり,その調整に多大な費用がかかるのである。 このため,国際システムが国....

公共性研究の方法と公共性三元論(下) 163り,今後もそうであって,国境をこえた金融のグローバル化が進めば進むほど対立・矛盾が激しくなり,その調整に多大な費用がかかるのである。 このため,国際システムが国家主権によって分断された多様で強固な国民システムの複合的構成体である場合には,これによって国際公共性の発展は妨げられたり,制約を受けたりする。多様で強固な国民公共性が存在することによって国際公共性の発展が非常に部分的な範囲や分野にとどまる場合もある。国際的諸関係の高度化とともに国際公共性が発展していくが,複雑で変動する矛盾・対立・支配・協調・調整関係をもちつつ,国際公共性と国民公共性は並存する場合が多い。近代社会の現実がその複雑な様相を映し出している。25) この多様で複雑な国際共同制御の現実を,次の四つの視点から分類して整理してみよう。一つは,国際共同制御の行為主体からの分類であり,二つめは国際共同制御の地理的・水平的範囲からの分類であり,三つめは,国際共同制御の集権的・垂直的統合度から分類したものであり,四つめは,国際共同利用の利用対象物の相違からの分類である。 国際共同制御をその行為主体(actor)から分類してみると,主権国家とその代表である国民政府が中心的な行為主体として国際共同制御にかかわる場合(主権国家中心型)と,主権国家もふくめ,市民や市民運動,市民団体,非政府間国際組織(NGO : non-govermental organization),自治体,企業(多国籍企業),国際機構など,広い範囲の関係団体や組織が国際的ネットワークを組織して,国際共同制御の行為主体となる場合(国際ネットワーク型)がある。近年では,さまざまな分野での国際交流が盛んになり,インターネットなどの国際的な情報伝達手段が発達するとともに,後者の国際ネットワーク型が活発になってきた。後ほど紹介するように,このような国際共同制御のスタイルに,「グローバル・ガバナンス」という名称も用いられるようになっている。 まずは,前者の主権国家が中心的な行為主体である場合からみていこう。 国境をこえた国際共同利用は,利用対象物が国家の領域主権で分断されている場合には当然だが,そうでない場合でも複数の主権国家の領域主権に係わりをもつ場合には,当該国の国益に関係することになる。そうなれば国際共同利用を効率的に秩序だてて運用できるようにするためには,関係主権国家が定期