100号

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164 高知論叢 第100号的に国際会議をもって調整したり,共同基準やルールを策定したりするなどの国境をこえた制御方法が必要となる。 国際共同制御行為の出発点は,主権国家が定期的な国際会議を開催して人的交流....

164 高知論叢 第100号的に国際会議をもって調整したり,共同基準やルールを策定したりするなどの国境をこえた制御方法が必要となる。 国際共同制御行為の出発点は,主権国家が定期的な国際会議を開催して人的交流や情報交換をすすめ,その交渉にもとづいて二国間や多数国間条約を締結し,それを批准して国際ルール(国際法)を制定することである。そして,条約(とりわけ多数国間条約)で定められた目的を遂行するために常設の国際機構(international organization)を設立することが多い。国際機構は,複数の国家によって共通の目的達成のために国家間の条約に基づいて設立された独自の主体性をもつ常設的団体と定義されており,国際組織,国際機関,政府間国際組織などの名称もあるが,本稿では国際機構と総称することにする。 条約は,憲章(charter)・協定(agreement)・協約(convention)・規約(covenant)・議定書(protocol)などのさまざまな名称で呼ばれることがあるが,基本的には国家間で文書の形式で締結され,国際法によって規律される国際的合意である。これ以外に,勧告とかガイドライン,宣言(declaration)などの法的拘束性のないもの,いわゆるソフト・ローとよばれるものも,最近は複雑な国家間利益の調整に一定の役割を果たしている。また最近では,「オゾン層保護のためのウィーン条約(1985年)」や「気候変動に関する国際連合枠組み条約(1992年)」のように,規制目的と一般原則のみを定め,具体的な権利・義務や基準設定は別途に定めるという枠組み条約方式(framework convention)が,科学の進歩に応じて各国の義務をすみやかに変更し,実効性をあげるために採用されている。 いずれであれ条約は法的拘束力をもつので,批准国の国内制度・基準・法令やその執行・運用方法などは国際ルールにそって変更・修正・追加される必要がある。主権国家はどのような体制であれ立法権・行政権(執行権)・司法権という国内制御装置をもち,それに基づいてそれぞれの国内制度・法令・ルールとその執行・運用が行われている。したがって条約が締結・批准されるということは,主権国家の立法権・行政権(執行権)・司法権などの権限や管轄権が制限を受けることであり,さらに条約によって常設の国際機構が設立されてそれらの権限がこれに委譲されることもある。