100号

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公共性研究の方法と公共性三元論(下) 167れた国際機構自身が,加盟国家機関を介さなくても,共通利益の実現のために必要な業務を直接的に実施する権限を委ねられたものである。非沿岸国もふくめて構成され,沿岸国....

公共性研究の方法と公共性三元論(下) 167れた国際機構自身が,加盟国家機関を介さなくても,共通利益の実現のために必要な業務を直接的に実施する権限を委ねられたものである。非沿岸国もふくめて構成され,沿岸国・非沿岸国から独立した法制定や執行機能をもち,直接に私人を拘束する権限も与えられた19世紀のダニューブ河やライン河のヨーロッパ国際河川委員会が,その萌芽的なものとして例示されている。 集権的・垂直的統合度からみて,もっとも進んでいるのかEU(欧州連合)である。ローマ条約(1957年)やマーストリヒト条約(1992年),アムステルダム条約(1997年),リスボン条約(2007年)などの国際憲章を加盟国が批准するという過程を踏みながら,立法機関に当たる閣僚会議や理事会そして行政機関にあたる欧州委員会さらに司法機関である欧州裁判所をそなえた三権分立の民主的国際制度をかまえて,統合を深めてきたのである。1993年のEU(欧州連合)発足により,加盟国の域内では国境をこえた人,モノ,サービスの移動が自由になった。1999年には単一通貨ユーロを導入し,加盟国の金融主権はヨーロッパ中央銀行に移譲された。現在の加盟国は27カ国まで拡大したが,財政制度の統合は残されたままであり,域内での経済的不均衡が拡大したため,ギリシャ政府の財政粉飾を契機にギリシャ・ショックなどのユーロ不安を引き起こした。 国際共同利用の利用対象物の相違から分類してみると,伝達的共同利用,単位的共同利用,交換的共同利用,貨幣的共同利用においては,比較的に早期から国際共同制御行為の進展がみられた。 河川,海運,交通(鉄道・運輸)や郵便,通信,保健衛生,度量衡などの分野においては,例えば,上述した19世紀のヨーロッパの国際河川委員会や国際行政連合などである。国際行政連合は,国際電気通信連合(1865年設立),万国郵便連合(1874年設立),国際度量衡事務局(1875年設立),万国工業所有権保護同盟(1883年設立),万国著作権保護同盟(1886年設立),万国農事協会(1905年設立)というように19世紀後半以降設立されたのである。技術基準の統一や専門規則の策定,情報資料の収集・伝達,統計資料の作成などが行われた。国際労働機関(ILO)も,1919年にベルサイユ条約によって創設された労働条件の改善と福祉の向上を目指す国際機構であった。 その後,これらの専門的国際機構の多くは,戦後,国際連合の専門機関とし