100号

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168 高知論叢 第100号て引き継がれた。国際連合の専門機関は,国際労働機関(ILO),国連食料農業機関(FAO),国連教育科学文化機関(UNESCO),世界保健機関(WHO),国際開発協会(IDA),世界銀行(IBRD),多....

168 高知論叢 第100号て引き継がれた。国際連合の専門機関は,国際労働機関(ILO),国連食料農業機関(FAO),国連教育科学文化機関(UNESCO),世界保健機関(WHO),国際開発協会(IDA),世界銀行(IBRD),多国間投資保証機関(MIGA),国際金融公社(IFC),国際通貨基金(IMF),国際民間航空機関(ICAO),万国郵便連合(UPU),国際電気通信連合(ITU),世界気象機関(WMO),国際海事機関(IMO),世界知的所有権機関(WIPO),国際農業開発基金(IFAD),国連工業開発機関(UNIDO)の17である。国際度量衡事務局は,戦後,国際標準化機構(ISO)に引き継がれた。 貨幣的共同利用に関しては,19世紀末にはほとんどの国が金本位制を採用していた。金本位制とは,各国が金を本位貨幣(価値基準の基本単位であること)と認め,それぞれの国の通貨単位と金の分量との等価関係を確定し,金の国際的な移動を自由化することで成立する。このことによって金は,国際的に共通の貨幣として,国際公共財になったのである。 領域主権が未確定な利用対象物については,戦後になってから進展があった。全人類の共有物であることを宣言し,国家による排他的領域主権を排除する方式の国際共同制御が発展してきた。例えば,宇宙空間については国際連合の宇宙空間平和利用委員会が宇宙条約(1967年)を定め,天体をふくむ宇宙空間の領域権の設定の明示的な禁止とそれが全人類に認められた活動分野であることを宣言している。これは月についても月協定(1984年)で定められている。また深海底についても国際連合海洋法条約(1994年)が,深海底が人類のすべてに利用可能な「人類の共同遺産(common heritage of mankind)」であることを宣言している。さらに公海についても,国際慣習法や国際連合海洋法条約で,航行自由の原則と領域主権の禁止が定められ,さらに海賊取り締まりの権限(管轄権)がすべての国に認められている。 しかし以上の利用対象物と比較して社会的利用対象物,とりわけ平和・安全保障や人権分野においては,国際共同制御は遅々として進まなかった。例えば,国際連合の活動を総括して改革を提起した報告書は,人道的活動(教育・保健・福祉・難民保護)や運輸・通信・気象・統計などの分野の情報収集,標準化作業,規範設定作業などにおいては,加盟国間の合意形成が比較的容易であった