100号

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170 高知論叢 第100号実現を達成するためには,グローバル・ガバナンスが必要でありそれを強化すべきであるとして,その意義と方法,および四つの中核的な領域について具体的改革策を提起した画期的な報告書である....

170 高知論叢 第100号実現を達成するためには,グローバル・ガバナンスが必要でありそれを強化すべきであるとして,その意義と方法,および四つの中核的な領域について具体的改革策を提起した画期的な報告書である。包括的で多面的な内容であるが,国際共同制御を語る上で欠かせない研究成果であるので,紀国の責任で要約して紹介してみよう。28) 報告書は,次のようにグローバル・ガバナンスという用語を定義する。それをまとめれば次のようになる。 第1に,ガバナンスとは,集団的な意思決定の方法であり,またその過程(プロセス)である。したがってグローバル・ガバナンスとは,地球規模レベルでの,つまり地域的・地理的範囲でみてたいへん高度なレベルでの集団的な意思決定過程でありその方法である。また次にみるように,これに参加する行為主体は多様で多数にのぼるので,これらによって形づくられる意思決定過程は,常に発展し複雑な相互作用によって形成される動態的なものであって,一つの決まったモデルや形式があるわけではない。 第2に,グローバルな意思決定過程は,市民,市民運動,非政府間国際組織(NGO),企業(多国籍企業),市場,自治体,国民政府,国際機構がかかわり縦軸において重層的で相互作用的なものであり,また国際機構や国民政府を中心とするグローバル・レベルや地域レベル,現地レベルでのグローバル・ネットワークが形成され横軸において多層的で相互作用的なものである。 第3に,グローバル・ガバナンスは強化されるべきであるが,世界政府や世界連邦のような世界レベルでの中央集権を目指すものではない。それが民主主義を脅かしたり,あらたに強大な権力を導く恐れがあるからである。 グローバル・ガバナンスを提起しそれを強める必要性が生じた理由を,報告書は,世界のすべての人々が「地球隣人社会」あるいは「地球村」と表現できるほど,緊密な共同利用者関係で結びつけられるようになったからであるとして,次のような例をあげる。 運輸や通信の技術発展により距離と時間が短縮されたこと,貿易,工業発展,多国籍企業,投資の増大が世界を緊密に結びつけるようになったこと,そしてこれらの活動のすべてが地球の生態系の資源に依存しており,その劣化がます