100号

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公共性研究の方法と公共性三元論(下) 171ます明らかになりつつあることである。例えばヨーロッパで使われるエアゾールが南米での皮膚癌の原因になり,ロシアでの穀物不作がアフリカの飢餓を悪化させ,北米の不景気....

公共性研究の方法と公共性三元論(下) 171ます明らかになりつつあることである。例えばヨーロッパで使われるエアゾールが南米での皮膚癌の原因になり,ロシアでの穀物不作がアフリカの飢餓を悪化させ,北米の不景気がアジアの人々から雇用を奪い,アフリカの紛争によってヨーロッパへの難民が増えるなどのことである。 その結果,国民国家が協力し隣人社会の一員として行動しなければならない問題がますます増大しているという。例えば,平和と秩序の維持,経済活動の拡大,汚染との取り組み,気候の変動を抑止あるいは最小限の抑制,伝染病との闘い,兵器拡散の抑制,砂漠化の防止,種の多様性の保護,テロ抑止,飢餓克服,経済不況の克服,希少な資源の分かち合い,麻薬取引犯人の逮捕,女性の解放,人権擁護などの問題である。  「地球隣人社会(global neighbourhood)」という概念は,この報告書の重要なキーワードであり,地球人類全体が地球資源や生態系の共同利用者としての諸関係を強めていることを表したものである。しかし筆者がこれまで何度も述べてきたように,共同利用関係はある者の利益が他の者の利益と競合する関係であって,その緊密度・統合度が高まるほど競合関係も強まる。これを共同利益関係に高めるには,優れた国際共同制御が必要になる。つまり,国際共同制御の目的は,持続的な国際共同利益の実現である。 報告書は,この国際共同利益の実現は,それを具体化したグローバルな価値観・市民倫理・規範が行動指針として広く受け入れられ,それを身につけたリーダーシップが発揮され,それによって質の高いグローバル・ガバナンスが形成されることによって,達成が容易になるという。 報告書のいう価値観(values)とは,文化的,政治的,宗教的,思想的な相異や地縁・利権そして民族・文化のアイデンティティーをこえ全人類が支持でき,等しく共有できることを目指した普遍的なものであって,その点で抽象的ではあるが,生命の尊重,自由,正義と公正,相互尊重,配慮,誠実さが示されている。 そしてこれを共通の権利・義務関係としてさらに具体化したものが,グローバルな市民倫理であり,規範である。 それはすべての人々に次のような権利を認める。安全な生活,平等な扱い,