100号

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174 高知論叢 第100号失敗したか,国際公共性研究とは,このような人間の国際的な集合的行為関係・行為様式の相互作用の動態を,歴史的・具体的・現実的に明らかにすることである。 国際公共性についても,「非排....

174 高知論叢 第100号失敗したか,国際公共性研究とは,このような人間の国際的な集合的行為関係・行為様式の相互作用の動態を,歴史的・具体的・現実的に明らかにすることである。 国際公共性についても,「非排除性」「非競合性」という財・サービスの性質で,国際公共財を定義しようとする誤った研究方法がある。これまでわたしが批判してきたように,そのような性質を生まれながらにもっている財・サービスはこの世に存在しない。人間集団が資源の共同利用を上手にコントロール(制御)して利用者すべてに持続的な公平利益を与えることができたとしても,それはそういう集合的行為関係・行為様式を人間集団が創造し,その永続調整が可能であった場合のことである。 このような国際公共財論は,国際平和や国際経済の安定などの元から集合的・非競合的表現である概念を国際公共財といったり,存在しているのではなく創り出すものであるのに純粋の国際公共財をみつけるのは容易ではないといったりして,理論的混乱に陥っている場合が多い。ただし次に取り上げる研究成果のように,理論的にあいまいで混乱していても,たどり着こうとしている目標は,わたしと共通している研究もある。29) 国連開発計画(UNDP)は,「地球公共財(global public goods)」の研究において,「非排除性」「非競合性」を基本にその分析を行った。地球公共財を次のように定義する。「地球公共財と呼ばれるものは,次の二つの基準を満たさなければならない。第一に,その便益が強い公共性を持っていることである。それは,「消費の非競合性」と「非排除性」によって特徴づけられる。こうした特徴は公共財に一般的に見られるものである。第二の基準は,その便益が普遍性を持っていることである。例えば,複数の国家(ある特定グループ以外の国々も含む)や複数の人間集団(単一の集団だけでなく将来の世代も含む,あるいは,将来世代の選択のオプションを閉ざさない限りにおいての現在の世代)の便益にかなっているかということである。これらの諸要件を満たすことによって人類全体を地球公共財の受益者とすることができるのである。」 このような誤った定義から出発したため,次のように地球公共財の分類や地球公共財という用語の使い方そのものがあいまいなものになってしまった。