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178 高知論叢 第100号 このような現実を反映して,超大国となった覇権国が供給する財・サービスを国際公共財と定義する理論が生まれてきた。ここではそれらの理論を整理してみて,国際公共性三元論の立場から批判....

178 高知論叢 第100号 このような現実を反映して,超大国となった覇権国が供給する財・サービスを国際公共財と定義する理論が生まれてきた。ここではそれらの理論を整理してみて,国際公共性三元論の立場から批判的に検討してみることにする。 このような視点から国際公共財に関する多数の研究成果を発展させてきたのが,いわゆるアメリカの国際政治経済学派(International Political Economy :IPE)である。これには,ネオ・リアリズムの潮流に属するといわれる覇権安定論者と,それと対照的なネオ・リベラリズムの潮流にある相互依存論者がいる。30) ちなみに国際政治学分野において,リアリズム論者とは,国際関係は基本的にアナーキー状態(無政府状態)であり,その行為主体(actor)である国家は国益をめぐって,とりわけ軍事的な安全保障をめぐって対立と競争状態にあるとみて,国際協調を否定する論者の総称である。これと対照的にリベラリズム論者は,国家だけでなく非政府組織,多国籍企業,国際機構なども国際関係の行為主体となりうることを認め,国家も一元的単一体ではなく,政策領域によっては積極的な協調関係が発展するとみる論者のことである。1970年代にかけてこのリアリズム・リベラリズム論争が激しさを増したが,その後,この論争は,双方が歩み寄り,より時代的状況に対応して理論を洗練化させた後,1980年代には,ネオ・リアリズムとネオ・リベラリズム論争となって再燃したが,その後収束したといわれている。いずれの方向で収束したかは議論を呼ぶところである。 ネオ・リアリズム論者は,国際的な制度や後ほど詳しく検討する国際レジーム(international regimes)によって国家間対立が緩和されることを認めるが国際社会は依然としてアナーキーな状態にあり,国際関係は安全保障の分野はもちろん経済関係についても対立・競争関係にあるとみる。これに対してネオ・リベラリズム論者は,国家が国際関係における主要な行為主体であり利己的な行動をとることは認めつつも国際的制度やレジームの発展により積極的な国際協調が可能であるとの立場をとる。 覇権安定論者の国際公共財論にかかわる代表的な見解や共通点をまとめると,次のようになる。31) (1)政治的・軍事的・経済的に超大国である覇権国が国際公共財を供給する