100号

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公共性研究の方法と公共性三元論(下) 179ことによって,国際的な政治・経済システムの安定や繁栄がもたらされる。パックス・ロマーナ,パックス・ブリタニカ,パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)がその....

公共性研究の方法と公共性三元論(下) 179ことによって,国際的な政治・経済システムの安定や繁栄がもたらされる。パックス・ロマーナ,パックス・ブリタニカ,パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)がその例であり,1930年代の大不況はイギリスやアメリカなどの覇権国が,国際公共財を供給する責務を果たさなかったことに起因する。 (2)国際公共財とは,平和・安全保障,航海・通商の自由と安全,市場の開放や自由貿易制度,資本不足国への資金供給や援助,国際通貨システムや固定為替相場制度,マクロ経済政策調整,金融不安の際の国際的な最後の貸し手としての役割,所有権の国際的普及,重量基準の国際的規格化などである。なかにはパックス・アメリカーナというアメリカの覇権システムや秩序そのものが国際公共財であるとまでいう論者もいる。 (3)上記の国際公共財の定式化には,公共経済学のいう公共財の定義,いわゆる「非排除性(消費を排除できないこと)」と「非競合性(ある人の消費が他の人の消費を妨げないこと)」という二つの基準が国際的レベルで適用されている。 (4)覇権国は,国際公共財の費用負担の過大化や非覇権国のフリーライダー(ただ乗り)行動により衰退を余儀なくされ,そのことによって世界の政治・経済は不安定になり混乱をきたす。 このような覇権安定論者の国際公共財論を国際公共性三元論の立場から検討すれば,次のように評価できる。 第1に,国際公共財の定義に関してであるが,そこで国際公共財であると定式化されているのは,覇権国が供給するか覇権国に所在する利用対象物であって,それらを複数の関係国が国際共同利用するからである。したがって国際共同利用という行為側面からだけで評価すれば,国際公共財としての特性を備えているといえる。 第2にしかしながら,国際共同利用するのは覇権国によりその利用を許可された特定の複数国(特定の同盟国,加盟国,契約国)であるので,共同利用の地域的範囲という視点からみた国際公共性的性格は,限定されたものである。 この点を指して,覇権国の国際公共財は,会員制クラブが共同利用するような性格をもった「国際クラブ財」であるという意見もある。また,軍事同盟のように加盟国にとっては国際公共財であるとしても,非加盟国や敵対国にとっ