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180 高知論叢 第100号ては非国際公共財あるいはマイナス国際公共財になることを指摘する意見もある。要するに共同利用の範囲や質的程度から評価しても,その国際公共性的性格は低いといえる。 第3に,覇権国が提....

180 高知論叢 第100号ては非国際公共財あるいはマイナス国際公共財になることを指摘する意見もある。要するに共同利用の範囲や質的程度から評価しても,その国際公共性的性格は低いといえる。 第3に,覇権国が提供しそれを特定国に開放する国際共同利用の対象物は,平和や航海の安全を保障する軍事力,通貨・金融,資本供給,自由市場などが挙げられており,自然的利用対象物ではなく,主に社会的利用対象物である。なかには,これらの総体をふくめて覇権国による秩序そのもの,例えばアメリカによる平和(パックス・アメリカーナ)を国際公共財であるという意見もある。 第4に,上記の国際公共財の定式化に,いわゆる「非排除性」と「非競合性」が国際的レベルで適用されていることであるが,財の素材的性質として「非排除性」,「非競合性」を備えるものを公共財と定式化する誤りについては,わたしはすでに繰り返し指摘した。上述した国際公共財がそれぞれ現実に「非競合性」をもっているかどうかについては,疑問が多い。また「非競合性」を素材的性質性に求めた結果,国際公共財を例えば平和や秩序などの元からの集合的・非競合的概念に求めるのも誤っている。 第5に,覇権安定論者の国際公共財を国際共同利益の行為側面から評価すれば,その質的程度性は必ずしも高いとは限らないことである。 覇権安定論者は,覇権国の提供する国際公共財の利益がおおむね,関係国(同盟国,加盟国)全体に還元されることを前提にして,理論を展開する傾向にあり,現実に国際共同利益を生み出し還元されているのかどうかという点での具体的な実証や測定基準の検討をあいまいにしている。これらの国際公共財が覇権国に特権的利益や利権をもたらしていることが多い。それらの具体的検証が必要である。 第6に,覇権安定論者の国際公共財を国際共同制御の行為側面から評価すれば,その質的程度性がきわめて低い国際公共財であるといわざるをえないことである。この側面から厳密に評価すれば国際公共財の名に値しないといっても過言ではない。国際連合やIMF などの国際組織は,加盟国の力や出資の大きい国に有利になっているとしても,一応,形式的に加盟国や出資国の意思が反映する仕組みを最低限にでも持っている。これと比較すれば,覇権国の提供す