100号

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公共性研究の方法と公共性三元論(下) 181る国際公共財の管理は,関係国や加盟国の共同制御の下に置かれているわけではなく,もっぱら覇権国の指揮・管理下にあるからである。 次にアメリカの国際政治経済学派のネ....

公共性研究の方法と公共性三元論(下) 181る国際公共財の管理は,関係国や加盟国の共同制御の下に置かれているわけではなく,もっぱら覇権国の指揮・管理下にあるからである。 次にアメリカの国際政治経済学派のネオ・リベラリズムの潮流に属するといわれる相互依存論を取り上げよう。相互依存論の代表的論客は複合的相互依存論(complex interdependence)を展開する。複合的相互依存論者の国際公共財論にかかわる見解を要約すると,次のようにまとめることができる。32) (1)相互依存とは,戦後,財,通貨,人,情報などの国境をこえた移動や国際取引の飛躍的な増大によって,国家や国家内の行為主体がそれぞれ相互的な影響を受けるようになった状況である。 このような相互依存状況によって,次のリアリズム仮説は有効性を失ったと論者は批判する。それは,①一体的単位としての国家が国際政治の主要な行為主体(actor)であり,②軍事力が有効で効果的な政策手段であり,③国際政治の問題群は階層的であり,安全保障が高度で(high politics),経済や社会的問題は低い位置(low politics)にある,この三つである。 これに代わって,これと対極的な複合的相互依存状況が現れた。それは,①多元的な経路(channels)で国際社会が結びついている。例えば,公式の外交取り決めだけでなく非公式の政府エリート間の結びつき,非政府部門間のエリートの非公式の結びつき,さらに多国籍銀行や多国籍企業などの国家をこえた組織など,国家間関係,脱政府的関係(transgovermental relation),脱国家的関係(transnational relation)の増大である。②国家間の協議事項は,明瞭で一貫した階層性をもたない多元的な問題群で構成されている。国内政治上の問題と考えられるものも多く,国内諸問題と対外諸問題の区分があいまいになっている。③複合的相互依存状況が支配的である地域や問題領域では,その解決のために軍事力が行使されることはない。なお,いずれの仮説も理念型として示されたものであって,現実はこの中間にあると論者はいう。 (2)国際政治における分析概念として相互依存をとらえる方法が必要であり,そのためには相互依存がコスト(費用や損失)とパワー(power)を生み出すことに注目すべきである。 相互依存は,敏感性(sensitivity)と脆弱性(vulnerability)というコストを