100号

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186 高知論叢 第100号てはそれなりの意義がある。なぜなら,世界政府をもたず多様な主権国家によって構成されている国際システムにおいては,国際共同制御は,関係国の利益や力関係,歴史的・民族的な国家間関係さ....

186 高知論叢 第100号てはそれなりの意義がある。なぜなら,世界政府をもたず多様な主権国家によって構成されている国際システムにおいては,国際共同制御は,関係国の利益や力関係,歴史的・民族的な国家間関係さらに問題の重要性についての認識や利害関係度などが反映して,きわめて複雑で流動的で多様な様相を示すからである。 二つめのレジームの生成・変動についての諸理論(レジーム・アプローチ)についても,定義と同様に多様な諸学説がある。ある論者の分類にしたがえば,構造主義(structuralism),機能主義(functional theories),ゲームの理論主義(game-theoretic approaches),認知主義(cognitive theories)などが代表的な理論である。 構造主義とは,支配的なパワー(power)が存在するときに,そのパワー構造によってレジームが創造され維持されると説明するものであって,その衰退はその弱体化を招くという理論である。 機能主義は,レジームの生成要因を,レジームがコミュニケーションの場を提供するなどの作用で,情報や取引費用を軽減し,期待や予測可能性を増大させ不確実性を低下させる効果があることに求めるものである。覇権国家によって創造されたレジームが,覇権衰退後も生き残りことができるのは,その機能的効果があるからだという。 ゲームの理論主義は,競合した利益関係に立ち自己の利益の最大化を追求する行為主体が,共倒れ(囚人のジレンマ)にならないように,次善の策として協力行動をとる戦略的行動パターンをゲーム・マトリックスで説明する理論である。リアリストのいう無政府的状態でも協調行動が生じることを説明できるメリットがあるといわれる。 認知主義とは,レジームの生成・変動についての要因を,知識(knowledge)や学習(learning),信条体系(belief systems),イデオロギー(ideology)などで説明しようとする論者の総称である。協調行動は,関係者の理解度や情報処理能力そして学習によって影響を受ける。行為者の学習の重要度に注目することによって,他の三つの理論と比べて,レジームの進化や変動の説明が容易となるメリットがあると評価されている。