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公共性研究の方法と公共性三元論(下) 187 三つめのレジームに対する態度という視点から諸理論を整理すれば,覇権によってのみレジームが創造されるとする構造主義(ネオ・リアリズム)はレジームに対して消極的立....

公共性研究の方法と公共性三元論(下) 187 三つめのレジームに対する態度という視点から諸理論を整理すれば,覇権によってのみレジームが創造されるとする構造主義(ネオ・リアリズム)はレジームに対して消極的立場をとる。機能主義は覇権衰退後もレジームが存続することを主張する点ではそれよりも積極的であり,ゲームの理論主義は覇権がなくてもレジームが生じるとみる点でより積極的である。さらに,認知主義には,レジームを国際関係に普遍的な現象であるとみて積極的な立場や主張をとる論者が多い。 このようにレジームに対する態度を否定から積極的までに整理してみると,それは国際システムを,国益をめぐる「万人の万人に対する闘争」とみるホッブズから,国際法や道義にもとづいた法秩序にあるとみるグロティウス,そして永久平和のための万国公民法を構想したカントまでの幅をもった思想的立場とも関係しているといえるのである。 ただし,これまでのレジームに関する研究成果は国際共同制御の生成・発展・変動などの動態的諸要因の検討が中心であって,次のような視点からの研究や考察が弱い。 第1に,国際共同制御の質的程度という側面,つまり制御の民主主義的性格という視点からの評価や考察が総じて弱いということである。形式的分析だけでなくこの側面からのレジーム分析も重要な課題である。 第2に,国際共同制御が現実に国際共同利益を実現させているかどうかの視点からの評価,つまり国際共同利益の行為側面との関係での評価や考察が総じて弱いということである。レジームを全体の利益(共通の利益)のための制御行為であると最初から規定してかかる論者も多い。レジームが,どのような,そしてどの程度の国際共同利益を実現させているのかを,具体的に評価・検証することと,その評価方法と検証基準の検討が重要な課題になる。 国際経済学の分野には,上述した国際政治経済学派(IPE)の覇権安定論と相互依存論双方の理論およびそのイデオロギー的性格を厳しく批判した研究成果がある。それは,覇権安定論者のいう国際公共財は,「非排除性」や「非競合性」という国際公共財の特性を備えていないばかりか,その実体は覇権国の私的財であってその利益はもっぱら覇権国に帰属することを,アメリカがドル基軸の