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188 高知論叢 第100号国際通貨制度を自国の赤字補填に利用していることや政策協調の実体がアメリカのためのマクロ経済調整であることなどを,具体的に実証して示したものである。 覇権的地位から衰退しつつあるア....

188 高知論叢 第100号国際通貨制度を自国の赤字補填に利用していることや政策協調の実体がアメリカのためのマクロ経済調整であることなどを,具体的に実証して示したものである。 覇権的地位から衰退しつつあるアメリカが,戦後自らが構築を主導した国際システムを自国本位に活用すること,これを論者は,「国際公共財の私的財化」と定義し,それが国際公共財論を隠れ蓑にして進行することに強い警鐘を鳴らす。他方,相互依存論やそのレジーム論は,国際公共財の共同供給もありうるとし,とくに覇権衰退後に主要諸国間の協力で既存システムを維持できる可能性を強調しているが,それもまた,アメリカの覇権後退を救済するために同盟国に負担配分(バードン・シェアリング)を求める根拠にされたり,そのようなイデオロギーに利用されることに論者は警戒感を強める。 衰退しつつある覇権国は,覇権安定論に依拠して覇権存続の必要性を訴えつつ,相互依存論にもとづいて他の主要諸国に国際公共財(覇権国の私的財という色合いが強い)の負担分担を求める,というようにアメリカの覇権救済のためのイデオロギーとして(バードン・シェアリングの合理化のために)好都合良く使い分けられる。覇権安定論と相互依存論のいずれが正しいというのではなく,それらのイデオロギー性や実践的性格を見抜くべきであるというのである。34) 国際公共財であるか否かの判断は,あるいは国際公共性があるかどうかは,われわれのいう国際共同利益の側面から,その具体的な質的程度性を具体的に検証すべきことを示した研究成果として評価できる。おわりに 本稿では,第1章で提起した公共性研究の方法に基づき,公共性とは人間の集合的行為関係・行為様式を表したものであると広くとらえることによって,金融や国際金融もふくめさまざまな利用対象物について,さらに国内的・国際的な範囲の利用対象物についても統一して理解できる枠組みを構築しようとしてきた。さらにこの方法によって従来の学界における公共財についての誤った,狭くて硬直的な定義の批判を試みたのである。人間の集合的行為の現実を,成