100号

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197 書 評森 直人著『ヒュームにおける正義と統治文明社会の両義性』(創文社,2010年)田  中  敏  弘  (関西学院大学名誉教授)  Ⅰ 本書の序章「文明社会と両義性」で述べられているように,本書....

197 書 評森 直人著『ヒュームにおける正義と統治文明社会の両義性』(創文社,2010年)田  中  敏  弘  (関西学院大学名誉教授)  Ⅰ 本書の序章「文明社会と両義性」で述べられているように,本書は従来の先行研究において,文明論的な言説の重要性を強調した研究や,国制論的解釈を示した研究とも異なっている。著者は社会の自然な発展や望ましい共同体の構想を否定しないが,本書の主張点は,その副題に顕著に示されているように,ヒュームが示している社会の本質的不安定性についての認識を提示している点にある。人間とその社会を認識する上でのこの両義的な認識こそが, 彼の政治・経済論に一貫してみられることが強調されている。 「本書で主張したいのは,まずヒュームが社会の発展に関する認識と危惧を提示しているという点,次いで人間・社会に関するこの両義的な認識が政治と経済をめぐる彼の議論を貫く基調をなしているという点である」(p. 7)と述べられている。 このヒュームの人間・社会認識の両義性に関するポーコックやロバートスン,なかでもホントの研究方向に従いつつ,これらの研究をより発展させる試みとして,「ヒュームの両義性に関するより包括的な解釈」(p. 9)を提示しようとするものとみられる。このことは,著者によって,ヒューム社会認識の「両義性の全体像の探求」(p. 14)を目ざすと述べられている。 本書は二部から構成され,第一部は四章からなり,第二部は第五章から第八高知論叢(社会科学)第100号 2011年3 月