100号

100号 page 20/242

電子ブックを開く

このページは 100号 の電子ブックに掲載されている20ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
18 高知論叢 第100号である。君主が象徴なる意味は祭祀的機能や宗教的行事のみを司るものから,総ての国事行為に関与する君主までがあり得る。明治憲法下の君主は総ての国事行為をシラシメル象徴天皇であり,政務は....

18 高知論叢 第100号である。君主が象徴なる意味は祭祀的機能や宗教的行事のみを司るものから,総ての国事行為に関与する君主までがあり得る。明治憲法下の君主は総ての国事行為をシラシメル象徴天皇であり,政務は輔弼に委任する存在であった。しかし,明治維新直後においては親裁を指向するグループが存在し,天皇も総ての政務に臨裁する時期があったが,その時代においても天皇親裁が意味するところは専制君主ではなく,天皇に影響力を行使しようとする側近グループと官僚派の主導権争いにすぎなかった。憲法体制によって官僚派は実質的な親裁を憲法によって阻止した。それがシラシメル天皇であった。神武以来『記紀』に現れた天皇は親裁の時期はほとんどなく,摂関家,幕府に委任した時期が長かった。摂関時代,武家社会以外の時期においても公卿,豪族の合議制の時代がほとんどであり,井上毅が言うところのシラスが日本の国体であるとは,日本の国体は象徴天皇制と言い換えることもできた。明治憲法第一条「萬世一系天皇之を統治す」の井上毅こわしによる説明は,日本の国体はヤマト言葉のシラス(治シロシメス・知シラス食・斯シ羅ラ須ス)であり,ウシハク(宇ウ志シ波ハ久ク,宇ウ斯シ,領ウ居シ,主ウシ,奴ヌ之シ,奴ヌ斯シ)ではないとした。これは『古事記』並びに本居宣長『古事記伝』の研究に基づくものであると井上毅は述べた。井上毅のこの発言がシラス=日本の国体論の発端であった。しかし,シラスとは専制君主を意味せず,象徴天皇による国家統治を表現するヤマト言葉であった。シラス,シラシメル意味することは高天原の高峰から国の隅々までシロシメラル,敷き,知ることであった。『古事記』においてシラスの前には必ず天皇が政を行った場所が書かれている。シラスはあくまで天皇の目線から,国家統治が完了したことを意味した。しかし,天皇以外の人物にはシラスという言葉は使用されていない。中国や西洋と違って日本の統治形態はシラスであり,万世一系の天皇は国民を私有物として扱わなかったと言われてきたが,『記紀』でもまさに国民はアオイトクサ,オオミタカラという物に見なされている。シラスとは,私的に国家を支配する存在ではなかった,という事が前提であった。但し,明治の朝廷は幕府の石高をそのまま引き継ぎ,日本最大の土地所有者となった事実は,一般にはほとんど認識されていなかった。明治初年におい