100号

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198 高知論叢 第100号章の四章と総括をなす終章からなっている。 第一部では,先行研究に基づきつつ,「利己心による自然的社会秩序形成を,『正義』,『商業』,『自由』,『国際的な調和』」(p. 18)という側面....

198 高知論叢 第100号章の四章と総括をなす終章からなっている。 第一部では,先行研究に基づきつつ,「利己心による自然的社会秩序形成を,『正義』,『商業』,『自由』,『国際的な調和』」(p. 18)という側面からの把握が示される。ここでは先行研究の慎重な理解が提示される。 そのうえで,第二部において, 両義性を軸として,正義とともに展開されている重要な統治概念を中心に,「『統治』,『権力』,『勢力均衡』,『公債累増』」(p. 18)が取り上げられる。このように,統治概念を基盤として国内政治と国際政治の両面にわたるヒュームの議論が順次再検討され, 彼の政治・経済全体に関する認識が提示される。こうして,人間の不安定性と「社会の不安定性認識に基づき,統治権力による社会の秩序化を軸とする政治的な思考の体系」(p. 19)が示されることになる。そして終章では,以上の議論の総括として「正義と統治の二つの原理を基盤とするヒュームの二元的社会認識の構造」(p. 19)が示される。Ⅱ 第一部第一章「正義」では,先行研究を参照しながら,ヒューム正義論の特徴を「経験主義的・世俗的・規約主義的・非契約論的な理論」(p. 28)として定式化したうえで,「状況依存的な可変性の特質」(p. 45)が示される。可変性というのは,状況に応じ正義が不在となり停止されることがあるということである。これまでの解釈が社会的結合に関する正義の遵守に集中し, ヒュームが提示しているもう一つの原理である統治の原理を補完的な役割としてのみみてきたことの誤りを指摘し,「統治は正義から独立したそれ固有の意義を持つ」(p. 45)点が強調される。 第二章で著者は,ヒュームの経済論を奢侈とインダストリと技芸を中心とした経済社会の自律的発展の認識として理解し,経済社会の「自然的で調和的な発展」(p. 67)を根本とみる理解であるとする。そしてこれとは相いれない商業と自由のもつマイナス面の言説は周縁的なものと位置づけているとされる。 これに対して,自由概念の内容を統治の原理から検討し直す必要のある点が