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森 直人著『ヒュームにおける正義と統治文明社会の両義性』を読んで199指摘される。この点は第八章で詳しく論じられることとなる。 第三章「自由の擁護」においては,これまでヒュームの自由概念は,商業発展と適....

森 直人著『ヒュームにおける正義と統治文明社会の両義性』を読んで199指摘される。この点は第八章で詳しく論じられることとなる。 第三章「自由の擁護」においては,これまでヒュームの自由概念は,商業発展と適合する法の支配を中心内容とするものであるか,あるいは自由概念は国制論の枠組みから自由な統治を中心とした意味に捉えられてきた。 これに対して著者は,ヒュームにみられる「自由に対する否定的な言及」(p. 85)を改めて指摘し,「これら自由の意味の重層性と両義性」(同上)という論点が検討されるべきであると主張される。 第四章の「国際的な調和」においては,先行研究におけるヒュームの国際関係認識の「自然的・調和的側面」(p. 98)が再検討される。ここでは,これまで中心をなしてきたヒュームの議論における互恵的相互依存関係の重視が見直しの対象となる。国際間正義の位置づけについて,ヒュームにはその影響力を強く限定する叙述がみられる点がとくに指摘される(p. 97)。その詳細な内容は第七章にゆずられている。 以上のように,第一部で文明社会論を中心とした従来の理解を参照し,「道徳,経済,国内政治,対外政策に関するヒュームの自然的・調和論的な社会認識」(p. 98)が取り上げられたが,ヒュームには,これと同時に,これとは相反する思考が存在することが指摘され,それの理解には,「正義を遵守できない弱さ」(p. 99)が人間性のうちにあり,それを補うために統治がもち出される。この統治の原理からみれば,ヒュームの議論には「人間社会の根本的な不安定性に関する認識と社会の安定を維持する統治権力による強制的な秩序化」(p. 99)の思考が見出される。そして人間本性の不安定性に基づく社会の不安定性,これらを補う統治権力の重要性をめぐる政治論的な思考が第二部で詳細に取上げられることになる。Ⅲ 第二部「政治社会の安定  統治をめぐる思考の系列  」に入って,第五章では,統治という社会的結合原理が改めて検討される。 まず,ヒュームの統治原理の特徴は,次の四点に集約される。