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200 高知論叢 第100号 第一に,「統治は正義を補強する」。第二に,「統治は正義と同様に規約(コンヴェンション)に基づく」, 第三に,「それは正義とは独立に形成される」。そして第四に,それは「大規模な社会....

200 高知論叢 第100号 第一に,「統治は正義を補強する」。第二に,「統治は正義と同様に規約(コンヴェンション)に基づく」, 第三に,「それは正義とは独立に形成される」。そして第四に,それは「大規模な社会では,正義の遵守よりも重視されると共に,とくに統治者の決定に関しては厳格な正義よりも統治の安定が重視される」。ここに「正義と統治の衝突」と「統治優先のロジック」(p. 136)が示される。 このようなヒュームにおける統治の重要性に対する強調は,政治的自由をめぐる彼の議論の再検討を必要とするとされ,ヒュームにおける自由のもつ意味が第六章「自由から権力へ」において取上げられる。 この章では,ヒュームの自由の中心的な意味が統治権力に対する制約にあることが確認されると共に,それとは相いれない見解が指摘される。それはブリテンの国制では,君主と議会の間の不規則性をはらんだ権力の均衡にあるものと捉えられ,これに関して議会の一体的権力の増大としての「自由の過剰」(p. 141)が警戒されていることが示される。また,自由の過剰の一つとして「出版の自由の濫用」(p. 153)も指摘されている。そしてここでは国制論的な自由から法学的自由への自由の意味の転換があることが指摘される。さらにまた,君主政における法学的な自由が持つ権力的な含意に関して,法学的な自由には,絶対的な君主権力が一元的な法により,臣民の権利を保障するという一面も取上げられる。 ヒュームによれば,正義と統治,あるいは法学的な自由と権力は,コンヴェンションに基づく拘束力により統合されていて,その限りでは両者の矛盾は顕在化しないが,両者の断絶がはっきりと現れる領域として,国際関係に関する認識においては,「正義と統治の衝突と統治優先のロジック」(p. 173)が示されることになる。 これは第七章「勢力均衡  対外政策に関する統治の論理の含意」で具体的に論じられる。 勢力均衡概念をどうとらえるか。これまでは,ヒュームの勢力均衡について,一方では各国の拡張政策を抑制し,相対的な平和をもたらす国際政治システムであるとされる,ヨーロッパにおける調和的な国際関係の形成に関する理論とされるのが一般的な理解である。しかし,同時に,もう一つの意味内容として,