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象徴天皇と神話21ことはドイツ国法の本旨ではない,現に君主主権の項目がない国もある,しかるにプロシアの憲法にはこれに反して国王の行政特権を列挙している。これは「憲法の大義」に係わる事項であるが如何か,と....

象徴天皇と神話21ことはドイツ国法の本旨ではない,現に君主主権の項目がない国もある,しかるにプロシアの憲法にはこれに反して国王の行政特権を列挙している。これは「憲法の大義」に係わる事項であるが如何か,という質問をした。この質問に対してロエスレルは,君主が国権を総攬するとはドイツ諸邦各国の原則である。国王の至尊権を定める事によって,立憲制度によって君主主権が毀損され,議院の干渉を防ぐ事ができると述べた。明治15年10月,伊藤博文らはドイツでシュタインとモッセから憲法学の講義を聴いた。その伊東巳代治筆記のモッセ講義記録によると,国王特権に関して,第一に,立憲君主と専制君主の区別をすべきである。第二に,国王其の身体を侵すべからずと言うことである。モッセは立憲君主について,万機悉く国王の一身から出ることはできないので必ず輔弼すべき「独立ノ機管整備セサルヘカラス……宰臣ノ政ヲ失シタルトキニ当リテ……独立ノ機管ニ於テ此ノ責任アリト雖トモ,独リ国王ニ於テハ決シテ法律上ノ責任アルヘカラス」これは第二の国王其の身体を侵すべからずと関連する。国王其の身体を侵すべからずとは政治上の責任を有しないという事と身体を冒すべからずという二つの意味がある「要スルニ其無責任ト其身体ノ冒スヘカラサルトヲ云フモノナリ49」と述べた。憲法草案の天皇大権の大枠はこの講義に沿って作成された。最終憲法草案の前に,甲乙の二つの草案が明治19年に提出された。憲法甲案試案では第一条「日本帝国ハ万世一系ノ天皇ノ治ス所ナリ」であった。憲法乙案試案50では,第一章主権 第一条「日本帝国ハ万世一系ノ天皇ノ治ス所ナリ」であった。治すはシラスと読む。これが甲案試案正文では「日本帝国ハ万世一系天皇之ヲ統治ス」となり,第一条については最終案となった。この原案は夏島草案以降「統治ス51」に改められたが,憲法制定以降においても,伊藤博文,49 「モッセ氏講義記録」『明治憲法制定史』原書房昭和46年461頁50 乙号試案では第三条「天皇ハ陸海軍ヲ統督ス」であった。甲案試案正文でも第十一条「天皇ハ陸海軍ヲ編成シ及之ヲ統率シ凡テ軍事ニ関スル最高命令ヲ下ス」とあり,未だ統帥権という言葉は使われていない。統帥権なる言葉は山縣有朋,大山巌ら軍の意向に沿って明治20年以降憲法草案に付け加えられた。軍が統帥なる言葉を使用するようになった時期は参謀本部設立時期の前後である。51 シラスが統治スに変えられた事情について,シラスという言葉は全体が漢文調の憲法