100号

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高知大学での教育活動をふりかえって235今からが学問青春 わたしの生活や人生での優先順位は,第一が家族,第二が教育,第三が研究であった。生活のすべてを投げうって研究に没頭し,すぐれた成果を生み出した先人....

高知大学での教育活動をふりかえって235今からが学問青春 わたしの生活や人生での優先順位は,第一が家族,第二が教育,第三が研究であった。生活のすべてを投げうって研究に没頭し,すぐれた成果を生み出した先人の話を耳にするたびに,自分はやはりダメな研究者だと落ち込んだこともある。 高知大学在任中に,残念ながらこれまで執筆してきた研究成果を単著にまとめることはかなわなかった。反省はしているが,後悔はしていない。 教育も上述したように整理してみると問題がなかったようであるが,多様な個性と考え方をもった人間相手のサービス業だから,いつもそううまくいくものではない。悩み悩み試行錯誤を繰り返してきたし,いろんな失敗や後悔も多い。最初の頃は,毎回の講義を消化するだけで時間が取られてしまい,じっくりと教育方法を検討してみる余裕もなかった。教育方法をいろいろ試し始めたのはいろんな経験が蓄積されてからのことである。これらの経験をさらに生かしてみたいとは思うが,わたしの大学教育活動は終わった。 定年退職後は,住まいを京都に移す。京都では多感な青春期を過ごし,妻とも出会い,青春の思い出がいっぱい詰まっているのである。娘夫婦と孫もいる。京都大学に近いその場所で,大学院生のときにやり残して後悔している課題に挑戦し,学問青春を楽しもうと考えている。 自由な雰囲気だった高知大学で伸び伸びと過ごせたこと(法人化後の今はでたらめな専制体制だが),さらに人文科学と社会科学の総合学部だった人文学部および政治学,法律学,経済学の総合学科だった経済学科(社会経済学科)での,学際的人間関係から広い視野と視点を学べたことに,深く感謝する次第である。 経済学の父といわれるアダム・スミス氏は,自由放任主義と曲解されているが,実際には狭い経済学の範囲にとどまるのでなく,政治,法学から道徳,哲学の領域までも包含した総合的な人間学問体系を追究したのである。人間の総合的な営みを研究する学部,学科に在籍できたことは,実に幸運であった。 心残りは,室戸貫歩(高知大学から室戸岬までの96㎞を昼夜歩く,空手部主