100号

100号 page 3/242

電子ブックを開く

このページは 100号 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
1 論 説象徴天皇と神話―― シラスとウシハクをめぐって ――田  村  安  興  序明治憲法下において主権者であった天皇とは違って昭和憲法以降の天皇は,「国民統合の象徴」となった,とする見解が通説で....

1 論 説象徴天皇と神話―― シラスとウシハクをめぐって ――田  村  安  興  序明治憲法下において主権者であった天皇とは違って昭和憲法以降の天皇は,「国民統合の象徴」となった,とする見解が通説である。しかし昭和憲法における天皇は,国事行為が縮小したものの,神事,政務,外交を担い,古代から大きく変わらない神事と公務を行っており,過去の天皇と同様に天あめのした下をシラシメル天皇である。シラ(ロ)シメルはシラスの尊敬語である。『記紀』に記されている,代々の天皇が崩御後に与えられた名は,現御神,天下,根国をシラシメル天皇という賞称であった。明治憲法は欧州における王権神授説型憲法を日本の皇統に導入した欽定憲法であったが,明治憲法下の天皇も古代から変わらぬ広義の象徴天皇であったと考えられる。近年考古学的発見があり,『記紀』の記述史料だけではなく,シラスの用例は『記紀』成立より数百年遡る事が確実となった。倭の五王武とされるワカタケル王(雄略天皇)の称号とみなされる鉄剣文字の中にシラスの文字が発見された。熊本県江田船山古墳から出土した鉄剣の銘文にある「天あまの下した治しらしめし獲わ□□□鹵る大王の世」である。5世紀倭の五王の時代には天皇の文字はないが,治しらす天あめのした下大王の称号が生まれたことを示している。埼玉県の稲荷山古墳から出土した鉄剣にも「獲わ か加多た支け鹵る大だい王おお寺在斯鬼宮時吾左治しらす天あめのした下」とある。高知論叢(社会科学)第100号 2011年3 月