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象徴天皇と神話29居宣長研究に依るものであると述べている。井上毅は,政府の法律顧問であったロエスレルやモッセの助言を得て憲法起草作業を行い,明治20年5月に憲法草案を書きあげた。この草案を元に,夏島の伊藤....

象徴天皇と神話29居宣長研究に依るものであると述べている。井上毅は,政府の法律顧問であったロエスレルやモッセの助言を得て憲法起草作業を行い,明治20年5月に憲法草案を書きあげた。この草案を元に,夏島の伊藤博文の別荘で,伊藤博文,井上毅,伊東巳代治,金子堅太郎らが検討を重ね,夏島草案をまとめ,明治22年2月11日,大日本帝国憲法が発布された。明治憲法に天皇を如何に位置付けるべきか,このことが明治憲法草案策定時における最重要な課題であった。シラスは国土国民を公(おほやけ)の概念で統治する公共的性格を有する統治理念であり,決して国民(おおみたから)を強制力,暴力装置を以て統治する,私領とするものではない,と説明した。これこそ万世一系の日本の朝廷による統治理念であり,万国と異なる皇国たる所以であるとした。憲法では万世一系ノ天皇之ヲ統治スと明文化したが,これは決してヨーロッパに由来する絶対君主規定ではなく,日本固有の統治概念シラスであった。憲法になじまぬ用語として,外国人法律顧問から反対された万世一系なる用語を,憲法第1条にいれた人物は井上毅であったが,万世一系の統治理念はシラスであるとしたことも井上毅によるものであった。憲法草案甲案,乙案に関する法律顧問への井上毅の質問「国王は国権の肖像(シンボル)ナリ……国王ニハ特権アルノ理ナシ58」ドイツ各国の憲法の例は国王は一切の政権を総攬し憲法に遵って施行する,とあり,明治15年のロエスレルの教えに遵って憲法に遵うと王権を規定すると,王権の特権を認めないことになるがいかがか,これに対して,明治20年2月8日,ロエスレルの回答は「国王の特権ナル意義ハ確定シタルモノニ非ズ」として英国とドイツの国王の特権の例をあげた。ドイツでは特権の語を用いることはまれで,大臣の副書を要するものであり,通常は用いない。国王は議院上の特権を指す論者もいる。特権とは国王特有の至尊権でありその範囲は広大だ,プロシアは特権のすべてが行政権に属する,そして英国においてはこれが立法権に属すると述べた。モッセは,「国王ハ侵スベカラズ」に「神聖ニシテ」の語を入れることについて,憲法によっ58 伊藤博文『憲法資料』憲法資料刊行会 昭和9年2月310頁