100号

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34 高知論叢 第100号を15年前から展開しており,いわば“プレ国体明徴論”と言うべきものであった。大正期の宗教学会を席巻したシラス論は,白鳥庫吉と安藤正次による論文で概ね決着していた。安藤正次は万葉集の言....

34 高知論叢 第100号を15年前から展開しており,いわば“プレ国体明徴論”と言うべきものであった。大正期の宗教学会を席巻したシラス論は,白鳥庫吉と安藤正次による論文で概ね決着していた。安藤正次は万葉集の言葉を根拠にして,知(Shi-Ru),敷(Shi-Ku),占(Shi-Mu)の3つの語は相互に関連があり,同源であると述べた。また,著(シルシ),記(シルス),示(シメス)もこの系列の言語である。シルは精神的活動であるのに対して,シクは物質的活動の言語であると述べた。白鳥庫吉は安藤正次の説を支持し,中国語やモンゴル語のMede と同様に,シラスのシは知るのシではなく,占む,敷くのシでありこれが支配するに変わったと述べた。またアキツシマの島,鳥の巣,住むも同源の言語であると述べた。以上安藤正次,白鳥庫吉の解釈は有力な見解であるが,このような理解では天下シラシメル国体を軽んずるものとして,戦前の学会からも世論からも評価されなかった。③ 憲法学会における論点法律家の中でも天皇大権をめぐって大正期から議論があった。中でも幅広く世論が関心を持った議論は天皇機関説事件であった。第1条大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス(天皇主権)と第4条天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リテ之ヲ行フ(統治大権)に関する憲法の最も基本的な条項が問われた。天皇の統治権をあえて明記しない,曖昧な二つの条項の解釈は,穂積八束らによる天皇主権説と一木喜徳郎による天皇機関説を生んだ。一木の学説は美濃部達吉によって継承された。天皇機関説は,統治権は法人たる国家にあるとし,天皇は国家の最高機関として統治権を行使する,国家法人説に基づくものであり,主権はあくまで天皇にある立憲君主学説であった。穂積八束,一木喜徳郎に続く世代の学者によって本格的な議論が起こる。美濃部達吉は第1条について「統治権が君主の一身上の権利として君主に属して居ることを意味するのではない。統治権は永久団体としての国家の権利であり,国家が統治権の主体であると称する」「統治権ハ国家ノ有スル権利であり,立