100号

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40 高知論叢 第100号 これにたいして,まんなかの「対立物の相互浸透の法則」は,「彼の『論理学』のうちでももっとも重要な第二部,本質論の全体をしめ」(同ページ)るとあることから,いわゆる反射規定の別名で....

40 高知論叢 第100号 これにたいして,まんなかの「対立物の相互浸透の法則」は,「彼の『論理学』のうちでももっとも重要な第二部,本質論の全体をしめ」(同ページ)るとあることから,いわゆる反射規定の別名である。ヘーゲルの反射規定は,明示的には第Ⅰ巻第1章第3節「価値形態または交換価値」で,等価物が相対的価値形態にたつ商品の価値表現に規定された契機にすぎない事柄の説明に使用されている。 本稿の問題設定は,ここからはじまる。すなわち,反射規定は,等価物が価値表現から受動的にうけとる性格にのみならず,じつは,資本イコール生産関係命題や富と貧困の関係あるいは資本蓄積にあいともなう労働者人口増加の想定にもひとしく妥当する。 たとえば,反射規定をふまえれば,資本とは生産関係だという基本命題の含意が簡単にとける。けだし,ヘーゲルの反射規定によれば,資本は,その反面での生産条件をうばわれた賃労働の存在と一義的な対応関係にあることから,それ自身がいわば他者の他者として,賃労働との内在的なむすびつきをふくむからである。そのため,資本は,対極の賃労働にたいして一つの極にたつ自立的な契機であるのに,それ自体で,労働者とのあいだになりたつ生産関係4)をあらわす。さらに,反射規定にたてば,一見労働力のもつ特有な属性にみえる剰余価値創造も,じつは賃労働を規定する生産条件の排他的所有によってもたらされた受身的な契機にすぎないゆえんが浮かびあがる。なぜなら,生産条件の排他的所有は,積極的なファクターとして,その差額が剰余価値になる労働力商品の価値と使用価値の両面を特殊歴史的に規定する因果関係にたつからである。剰余価値創造は,生産条件の排他的所有が,対極の契機をあらわす労働力商品を媒介にして,その敵対的な性格を発現させたものにほかならない。反射規定にあっては,一方の契機は,他方の契機との表裏一体の関係をふくむため,賃労働の属性は,能動的な要因としての資本によって刻印されるその社会的な産物である。また,貧困は,資本家の取得する富の労働者にたいするマイナス面をあらわす反射をなし,剰余価値をうみだす労働者サイドに,搾取の反面としての貧困がなりたつ。貧困の形成には,それに先行してその貧困を能動的に規定する富の形成が対応する。そればかりではない。賃労働は,資本の反