100号

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ヘーゲルの反射規定と『資本論』41射規定だから,資本と賃労働とのあいだの反射関係をふまえれば,資本の自己増殖運動は,同時に労働者人口と就業者の増大をふくむことになる。つまり,マルクスは,労働者数の増加と....

ヘーゲルの反射規定と『資本論』41射規定だから,資本と賃労働とのあいだの反射関係をふまえれば,資本の自己増殖運動は,同時に労働者人口と就業者の増大をふくむことになる。つまり,マルクスは,労働者数の増加という基本前提と資本蓄積にともなう就業労働者の増大の二つをみたしつつ,相対的過剰人口の形成をといた。そのいみで,反射規定は,近代社会の回転軸である資本の本質的な性格から剰余価値生産,さらに資本蓄積にまでかかわる点で,第Ⅰ巻の根幹部分に通底する基本原理である。もし,反射規定が資本=生産関係命題や富と貧困の関係あるいは資本の増大に照応する労働者人口の増大の仮定にあてはまるとすれば,『資本論』研究はさらにいっそうふかまると同時に,反射規定が社会関係の面からゆたかにふくらむことになる。 それゆえ,本稿の課題は,『資本論』第Ⅰ巻にそくし,ヘーゲルの発見した反射規定のもつ真価を検証し,ヘーゲル論理学と『資本論』との濃密なつながりを浮き彫りにすることにある。1) 『自然弁証法』(1)64ページ。2) Kapital, Ⅰ, S. 327,「手工業親方の資本家への転化…単に量的な変化の質的な変化4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4への転化の4 4 4 4 4 法則に関するヘーゲルの発見」(1867年6月22日づけマルクスのエンゲルスあて手紙,『資本論書簡』[2]国民文庫,岡崎次郎訳,40-1 ページ,圏点 マルクス)。量から質への転化のもっとも身近な実例は,加熱によって温度の単調な上昇をしめす水が,100℃にたっするや,液体から気体の水蒸気に一変するばあいにみられる。労働日の過度の延長が長期にわたるばあい,労働力の標準的な耐用年数がみじかくなったり,残業が1ヵ月に80時間をこえておこなわれるばあい,過労死がうまれやすくなるという因果関係も,量から質への転化の法則の具体例である。3) すくなくとも論理学上の問題として,否定の否定とはなにかは,『資本論』研究上おおきな争点である。というのも,否定の否定をもって,第一の事物がそっくりそのまま第三の事物のなかになりたつ連関としてとらえるデューリング流の見地が根づよく定着しているからである。そのいみで,そもそも否定の否定とは,第一の事物がそのまま第三の事物のなかに復活することかそれとも前者のもつ本質的な要素が後者のもつ性格として再生することかは,個人的所有の再建に先行する独自な根本問題である。個人的所有の再建については,拙著『資本と貧困』八朔社,2010年,第9章 を参照されたい。4) 生産関係とは,生産条件の所有を基底にもち,生産活動を軸にした再生産過程での人間どうしの特有なむすびつき方である。「生産関係 人間が彼らの社会的生活過程において,彼らの社会的生活の生産において,取り結ぶ関係 」(Kapital, Ⅲ , S. 885)。