100号

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44 高知論叢 第100号ある。」(Kapital, Ⅰ, S . 82) ここで,反射規定にかんするマルクスの強調点をときほぐせば,つぎのようになる。リンネルと上着との交換取引を,前者からみれば,それが使用価値をあらわす....

44 高知論叢 第100号ある。」(Kapital, Ⅰ, S . 82) ここで,反射規定にかんするマルクスの強調点をときほぐせば,つぎのようになる。リンネルと上着との交換取引を,前者からみれば,それが使用価値をあらわすのにたいして,後者が価値そのものをあらわし,貨幣形態の萌芽として直接的交換可能性をもつのは,交換関係にあっては,リンネルと上着がその現物形態のままでともに価値として区別されない存在をなすためである。両者は,交換という商品どうしの特有な社会関係に起因して,使用価値の相違に関係なく,その相異なる現物形態のまま価値そのものとみとめあうつながりをもつため,リンネルにとっては,相手の上着は,自分とちがう使用価値としてではなく,自分とおなじ価値としてのみかかわりあう。上着がリンネルにたいして価値として相対するのは,リンネルとのあいだでの価値としての同等性にもとづく。上着がリンネルにたいしてあらわす価値は,リンネル自身のそれにほかならない。等価物としての上着は,リンネルに内在する価値の現象形態である。だから,等価物の上着が直接的交換可能性の形態にあるのは,上着がその現物形態でもって,リンネルの価値をうつしだすためである。「上着の等価物4 4 4存在4 4 は,いわば,ただリンネルの反射規定4 4 4 4(Reflexionsbestimmung)なのである。5)」(マルクス『資本論第一巻初版』国民文庫,岡崎次郎訳,22[原]ページ,圏点 マルクス) ところが,通常,リンネル価値の反射として,上着が直接的交換可能性の形態をうけとるという因果は消えさっている。上着の等価物存在は,リンネル商品の価値表現とは関係なしに,それ自身,使用価値の物的な属性にゆらいするかのごとく,単独で自立的にあらわれる。思想的にふかい含蓄をもつ反射規定の発見は,ヘーゲル論理学の独自な功績にぞくする,と。 このように,マルクスは,反射規定をもって,等価物が相対的価値形態とはかかわりなく貨幣の萌芽としてあらわれる社会関係によって例解している。ちなみに,相対的価値形態と等価形態とは,不可分な契機でありながら,たがいにしりぞけあう単一の価値表現の内部の両極にほかならない。けだし,ある一商品が相対的価値形態にあるということは,別の一商品が等価形態にたつことに依存する。一方,ある一商品が相対的価値形態にたてば,別の商品は,不可