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象徴天皇と神話31.『古事記伝』とシラス・ウシハク(1)『古事記上つ巻』におけるシラス①シラシメル神本居宣長は『玉くしげ』冒頭において,シラシメルなる語について,天照大神が天から光を照らし出すという意味....

象徴天皇と神話31.『古事記伝』とシラス・ウシハク(1)『古事記上つ巻』におけるシラス①シラシメル神本居宣長は『玉くしげ』冒頭において,シラシメルなる語について,天照大神が天から光を照らし出すという意味であると解釈した。『古事記』神代冒頭の「天地初発之時」についての『古事記伝神代1之巻』冒頭の注において,高天原は天であり,山川草木,宮殿,万物を「全御孫命の所しろしめす知看,此国土の如く」照らし出す,という本居宣長の解釈について,橘守部は本居宣長が子供のような安直な理解であるとして批判した。橘守部は本居宣長がシロシメスをあたかもうわべだけの照明の如く理解しているとして,シロシメスをより神学的に解釈した。すなわち,現世,神霊界,幽冥界を含めた精神世界をシロシメスのであり,『記紀』の世界は“威い稜つ”が支配する意味深長な世界であると述べた2。『日本書紀』で屡々でてくる威稜3とは『記紀』の世界を理解するキーワードであったが,本居宣長が無視した威稜の概念は橘守部によって脚光を浴びた。『古事記』には各巻の冒頭に,必ず天皇が政を行うために詔を発した場所に続いて治天下也とある。これを本居宣長はアメノシタシロシメシキと訓じ,治をシロシメスと訓じた。天つ神はイザナギ,イザナミを天の浮き橋に立たせて,矛先で大八嶋を生ませた。多くの神々が生まれた中で,天照大神は三はしらの貴い子を生ませた。三人の神に「高天の原を知らせ」「食をすくに國を知らせ」「海原を知らせ」と命じた。スサノヲは「国を治らさずて」激しく泣いた。イザナギがおまえは国を知らさずして何故泣くのか,と聞くとスサノヲが私は「母の国根のかたす国に罷らん,汝はこの国に住むべからず」と言った。この有名な神話は天孫族が地上世界を平定することを「知らす」と述べている。2 『難古事記伝』『橘守部全集第二巻』昭和42年東京美術184頁3 威稜(みいつ)は神霊の威力,天子の威光を指す。漢書李廣伝に「威稜憺乎鄰国」「李奇曰,神霊之威日稜」とある。