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48 高知論叢 第100号1) 「賃労働という言葉でわれわれが考えているのは,資本と交換され,資本に転化され,資本を増殖する,自由な労働のことだけである。」(MEGA, Ⅱ /3・1, S. 120)2) 『資本論』第Ⅰ巻第10....

48 高知論叢 第100号1) 「賃労働という言葉でわれわれが考えているのは,資本と交換され,資本に転化され,資本を増殖する,自由な労働のことだけである。」(MEGA, Ⅱ /3・1, S. 120)2) 『資本論』第Ⅰ巻第10章に登場する物質的な生産方法としての「生産様式」(Kapital,Ⅰ , S. 333)についても,資本とおなじ原理があてはまる。「生産様式」は,具体的には,協業や分業を基礎とする工場をいみする。工場は,生産条件の排他的所有を前提になりたつから,生産様式は,特定の規定がなくても,資本とおなじように,それ自体で生産関係をあらわす。 ちなみに,マルクスは,工場内分業にかんしてつぎのようにいう。「貨幣は,一つの物ではなくて,一つの社会的関係である。貨幣の関係が,他のあらゆる経済的関係,たとえば分業4 4 などと同じように,一つの生産関係4 4 4 4 4 4 4 であるのはなぜか?」(『哲学の貧困』国民文庫,高木佑一郎訳,115ページ,圏点 頭川) 無規定の生産様式が生産関係を表現しているとすれば,第3篇と第4篇との関係にあらたなスポットライトがあたる。なぜなら,第3篇と第4篇とは,おのおの資本主義的生産関係の二面である資本と賃労働の対立的な関係という基底的な一面と生産条件の少数者への集積という追加的な一面とに対応することになるからである。また,無規定の生産様式が生産関係の表現ならば,資本主義の高度な生産力は生産条件の所有関係の敵対的な性格にもとづくことになる。 無規定の生産様式が生産関係とは無縁のたんなる労働過程上の超歴史的な概念だという主張には,その根本前提にかくされた生産条件の排他的所有の閑却がある。3) ヘーゲルの反射規定にたいして,社会関係を対象にしたマルクスのばあい,一つの進歩がある。磁石のプラスとマイナスなどの自然的な関係とちがって,マルクスの反射規定にあっては,二つの要因のあいだに,能動的に規定する要因と受動的に規定される要因との特有な関係がなりたつ。ここに,ヘーゲルにたいするマルクスの反射規定の差別性がある。3 富と貧困 前節で,マルクスが資本を生産関係と規定した本質的な根拠をもって,反射規定を援用して説明した。本節では,さらに一歩すすんで,資本主義における貧困は,富の反射規定にほかならない関係をあきらかにする。 すでにのべたとおり,資本が生産関係だというのは,生産条件の排他的所有が労働力商品の生成を内蔵しているためである。だから,じつは,前者の生産条件の排他的所有が,剰余価値を創造する後者の労働力の特有な属性を規定する関係にある。つまり,等価物が価値表現の反射規定であるのと同様,剰余価値をうむ労働力の固有な能力は,生産条件の排他的所有がそこに反射してうま